ep.61「ピース団」
「ピース団?」
水樹さんが、班長の言葉にそう反応した。
「そうだ」
「ピース団がどうしたのよ? あんな小ざかしい平和主義者共が何だって言うの?」
水樹さんが、班長に食ってかかるように言った。
横にいたオーロさんに静かに近づき、耳打ちする。
「ピース団って何ですか?」
「平和を愛する団体……侵略隊のことを目の敵にしてる奴らなんだね~。入団者は地球の有力者ばかりで、資源を他の星から略奪するのをやめろ、と生ぬるいことを掲げてる奴らなんだね~」
地球の資源の九割は、他の星から奪い取ることでまかなっている。
それをやめたらどうなるかなど、わかりきっているはずだ。
「馬鹿じゃないですか? その団体」
「実際馬鹿だけど、その影響力は馬鹿にできないんだね~。あいつらのせいで、侵略隊は世界中から資金援助を受けられず、いつも予算不足なんだね~」
班長が水樹さんをなだめながら話し始めた。
「水樹、落ち着け。僕達はピース団に聞きたいことができたから、パズルとポルトロンがピース団の団長を捕まえてきた。その拷問を水樹に頼みに来たんだ」
前言撤回。
忘れかけていたが、馬鹿ではなくこの人たちが凶暴すぎるのだ。
「へぇ~。面白そうねぇ~」
水樹さんがニヤリと笑い、黒いお盆を手にした。
―――――
侵略隊施設、地下一階。
石造りの、鉄格子がはめられた暗い地下牢獄。
一人の若い男性が入った牢獄の前で、オーロさんと班長と話し合っていた。
「そういえば、プフェーアトは?」
「月のスラムに行くところを見たんだね~」
「スラムって行ったことないんですけど、どんな感じなんでしょうか」
牢獄の中で男が叫んでいるが、全て無視する。
どうせ聞いてもつまらないし、これからもっと叫ぶから慣れておけ、と班長が言ったのだ。
「私を使う拷問というのは久しぶりだな」
「私だって久しぶりよ。あんたがいないと、相手がすぐポックリ逝くからね」
廊下の奥から、リティさんと水樹さんが歩いてくる。
その後ろにも二人の男性がついて来ている。片方は、親善合戦のときにパズルと呼ばれていたガリガリの男だ。
「永宮君かい? 僕の名前はグソー・ズアパル。皆からはパズルって呼ばれてるから、そう言ったほうがわかりやすいかな」
ガリガリの、パズルという人物と握手する。
「パズルさん、よろしくお願いします」
「あーだめだめ、やめて。あだ名にさんは付けなくていいし、ため口でいいよ。で、こっちの仏頂面が……」
「コダルド・ポルトロン、第一チームの班長だ。以後よろしく」
眉が太い、いかにもマジメそうな人物だ。
眉間にしわが寄っていて不機嫌そうにも見えるが、メノンさんのような人の上司だと、苦労することも多いのかもしれない。
「んじゃ、パパッと始めますかね」
水樹さんが牢獄の扉を開いた。
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