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ep.58「貯蔵室」

 侵略隊施設の一階、廊下の最奥部。

 窓が少なくて光があまり届かないせいか、ここの雰囲気だけ異様に暗い。

 

「貯蔵室……初めて来るな」


 オーロさんが言うには、メノンさんは大体ここにいるという。

 酒が大量に保管されていて、一日中飲んだくれているのだとか。


「メノンさ~ん、います――」

「俺の酒がねええええええ!」


 ドアノブを捻り、扉を開けた瞬間、メノンさんの叫び声が聞こえてくる。

 貯蔵室の中は大きなワインセラーのようになっていて、少し肌寒い。ただ、大きなワインセラーのわりには、肝心なワイン等の酒がひとつもない。


「あの、メノンさん、大丈夫ですか?」

「あああああああ。アルコールだ、アルコールを俺にくれえええ!」


 どうやら聞こえていないようだ。こちらに目も向けず大声で叫んでいる。

 両手を上にあげながら、神に祈るようなポーズを取っている。


「メノンさん、メノンさん!」

「うわっ! ……オーロと一緒にいた奴か、酒持ってないか?」


 大声で名前を呼ぶと、焦点が定まっていなかった目が元に戻る。

 プルプルと震える手をこちらに向けながら、酒を持ってないか聞いてくる。この人、アルコール依存症だな。


「持ってません。それより、この剣に何かしたらしいですけど、一体何したんですか?」


 腰に差していた剣をメノンさんに渡す。

 受け取った剣を見つめながら、いきなり立ち上がる。


「えーっと……名前聞いてなかったな、何だっけ?」

「永宮です」

「永宮…永宮…よし、覚えた。この剣のことを説明する前に、俺が何の研究してるか知ってるか?」


 首を横に振る。

 すると、メノンさんは剣を少し抜き、刀身を眺めながら言った。


「アホっぽいが、俺の分野は世界の理だ」


 世界の理?

 一体どんなものなのか想像もつかない。

 首をかしげて考えていると、メノンさんが笑った。


「ま、普通はわからないよな。例えば、この剣は今ここに存在している。こんなのはサルでもわかる、ごく当然のことだ」


 メノンさんは足音を鳴らしながら歩き、近くにあった鉄パイプの椅子に乱暴に座った。


「そのごく当然のことを、ササッと書き換えちまうんだ。今ここに存在するものを、一瞬で別の場所に移動させる。これがワープ、瞬間移動の原理だ。オーロに作ってやった武器がまさにそうだな」


 メノンさんは刀身を鞘に納め、こちらに向かって剣を投げてくる。

 両手でしっかりとキャッチし、剣を見る。


「何か強そうですね」

「制限も多いが、大抵は通常の武器とは比べ物にならん強さを誇っている。ちなみに俺の武器も、似たような感じだ」


 メノンさんが、人差し指と親指で小さな円を作る。

 親善合戦のときもしていた動きだ。

 円の中の景色が、不自然に揺らめき始める。瞬間、円の中の景色が入れ替わった。


「……海ですね」

「俺の武器は体、あるいは体に触れている囲いを操る。やろうと思えば、銀行の金も盗み放題、酒がどこでもいくらでも飲めるし、女風呂もすぐに覗ける」


 最後の説明はいらない。

 親指と人差し指を離すと、見えていた海の景色も消えた。

 

「お前の剣に入れた細工は、体積が変わらずに自由に質量を操れる力だ」


 質量とは重さ、つまり重さを自由に変化させることができるらしい。

 ……。


「それ、使えるんですか?」

「いや、そりゃ、アレだよ。こんな重いもん持てるんだぜ~とかいう自慢に使えるから」


 全然使えない機能じゃないか!




改善点などあればご指摘いただけると嬉しいです。

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