表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/146

ep.54「圧倒的」

 振り下ろしてくる右前足を、頭の上で両手を交差させて受け止める。とんでもない重さが体全体に伝わり、地面にヒビが入る。

 両足に力を込め、一瞬だけ受け止めている右足を浮かせる。その瞬間に右に倒れるように転がって避ける。

 すぐ横にある竜の足に、肘で思い切り叩くが汚れ一つつく様子はない。この鱗、今までに見たことがないほどの硬さを誇っている。


 竜がいきなり後ろ向いたかと思うと、遠心力の力を借りて勢いを持った尻尾が右側から迫ってくる。右腕を頭の横に持っていき咄嗟に身を守るが、突き刺さるような衝撃が体に走る。

 空中に吹っ飛ばされ、吐血する。その瞬間、竜が大口を開けているのに気がついた。身を捻って避けようとするが、舌で巻き取られるように捕まえられる。

 

 上半身だけが飛び出した状態で噛み切ろうとしてくる竜の歯を、両手で止める。足で竜の舌を蹴り飛ばしながら、手に力を込める。

 そのとき、下半身に尋常じゃない熱さを感じ、足の先に激痛が走る。あまりの痛みに力が緩み、竜の歯が腹に突き刺さる。


 すぐに力を込めなおし、竜の歯を止める。腹からは血がドクドクと流れ出し、すぐにでも出血で意識を失いそうだ。

 火事場の馬鹿力という奴なのか、手の血管が今までに見たことないほど浮き上がる。左右の腕に限界を優に超えた力が入り、竜の口を無理やりこじ開けた。


 

 地面に着地し、穴の空いた腹を押さえる。

 先ほど激痛を感じた足の先を見る。足が燃えながら溶けているところを見ると、竜の口の中で溶岩が当てられていたようだ。

 痛みを消すように深呼吸をし、竜を睨む。


「このクソトカゲめ……」


 そう呟きながら、左右の腕に篭った力を確認する。先ほど口をこじ開けたときの力が、まだ残っている。永続的なのか今だけなのかわからないが、この力があるうちに何とかしなければ勝てないだろう。


 右足に力を込めて飛び上がり、竜の背中に飛び乗る。滑り台のように背中を滑りながら尻尾の先に辿り着く。

 尻尾を脇に挟むように持ち上げ、足を大きく開く。上体を勢いよく捻り、筋肉がブチブチと切れる音を無視して竜を振り回す。

 ジャイアントスイングの様に回転しながら、竜の体を壁に叩きつける。


 穴全体を揺らすほどの衝撃で叩きつけたが、それでも傷はついていない。それどころか、尻尾を壁に当てて反撃をされる。

 

 地面に倒れこみ、肌で地面の冷たさを感じ取る。全身が悲鳴をあげているのが聞こえてくる。

 竜の足音がこちらに近づいてくるのがわかる。


 ここで死んでしまうのだろうか……。そう考えながら、意識がゆっくりと薄れていくのに身を任せた。



改善点などあればご指摘いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ