ep.3「アクアード星」
地面を踏んだ感触が、高級な絨毯のようにフワッとしている。
あたり一面に黄緑の目に優しい草原が広がっている。
「なんで水が無いのに、こんなみずみずしい色の草が生えるんでしょうね」
足元の草を数本ちぎる。
「さあね~? 俺は学者じゃないからさっぱりわからんよ~」
煙草を吸いながら言ったオーロさん。
口から煙をフーッ、と吐き出した。
「反逆者共は…あの砦に立てこもってるらしい」
班長が南東の方を指差した。
「こっちが来てる事も、既にわかってるだろう。初めてだから、永宮君は僕に付いてきてくれ。もちろん反逆者は皆殺しだ。じゃ、解散!」
オーロさんはそのまま煙草を咥えながら、
水樹さんはさっきの黒いお盆を持ちながら、
プフェーアトさんは小さな筒とナイフを持ち、
それぞれ砦の方に歩いていってしまった。
「僕たちも行こうか、永宮君」
班長が歩き出した後に続く。
「…あの、本当に皆殺しにするんですか?」
そう言うと、班長はキョトンとした顔をした。
いくら反逆したとしても、全員がやりたくてやったわけじゃないと思ったのだ。
すると、班長は納得したような顔をした。
「ああ! 一つ訂正するね。気に入ったのがいたら、捕まえて好きにしていいよ。地球で売ろうが、私的に使おうが僕たちは何も言わない」
いや…違います。そう言いかけた瞬間、班長の目つきが変わった。
「もしだけどね。反逆者共の中に、やりたくないのに周りと一緒にやってしまった、そんな奴も殺すのか? そんなことを言うようなら、君は今すぐ宇宙船に戻って引きこもっていなさい。そして帰ったらすぐに侵略隊を辞めろ」
班長の目つきに、殺意が篭る。
その荒々しい物言いと殺意に、恐怖を覚えた。
「い、いえ。なんでもありません、失言でした」
さっきの言葉を訂正すると、班長の目つきが元の優しいものに戻る。
「ならいいんだ。さっきは荒い言い方をしたけど、本当に気に入ったのがいたら持って帰っていいからね」
腰に大きな剣をぶらさげた班長が、砦に向かって進んでいく。
班長の後姿を見続ける。
少し立ち止まり、ふと呟いた。
「俺、この仕事続けられるかな…」