ep.46「入り乱れる」
ピエロが空高く飛び上がりながら、ナイフを大量に投げてくる。
視界がナイフに反射する光で埋め尽くされる。
「いつ見ても凄い曲芸だな、ピエロ!」
リティさんが横で腕を組みながら、ナイフの大群を見て感心している。
腰に差した剣を抜き、磁力を使ってピエロが投げたナイフの向きを調整する。
百本はくだらない数のナイフが観客席に突き刺さった。
「うわぁ、逸らされちゃった! ピエロ、びっくり♪」
ピエロがトランポリンの上でジャンプしながら、テントの天井まで飛び上がる。
スポットライトを浴びながら空中ブランコに捕まり、空中に浮かぶ輪っか達に火をつけ始める。
「火の輪くぐりのお時間で~す♪」
ガコン! という大きな音を立てながら、火が付いたいくつもの輪っかテント中を飛び回る。
スポットライトに照らされながら、火の輪が近づいてくる。
「私は火は嫌いだ、お断りさせていただこうか!」
リティさんが右手で、自分の左手首を持った。ブチブチと肉を引きちぎる音を立てながら、左腕を引きちぎった。
右腕で、引きちぎった左腕を使って火の輪を全て打ち返した。
「むっ! あつ、熱いぞ!」
左腕に火が引火する。その火が右腕に伝わり、リティさんの体全体を燃やし始める。
「永宮、すまんが私の頭を斬ってくれ、頼む!」
リティさんが暴れながらそう言った。剣を構え、首を刎ね飛ばす。
空中に浮かび上がったリティさんの頭から、体が生える。もちろんというか何と言うか、全裸で着地する。
「リティさん、これどうぞ」
「おお、すまないな」
上着を一枚脱ぎ、リティさんに渡す。
受け取った上着を腰に巻き、ピエロの方を向いた。
「夢の世界への特急列車♪ みんな大好きギロチンさ♪」
空気を切る音を轟かせながら、馬鹿みたいに大きい刃が四つこちらに向かってくる。
地面を転がりながら避けて、ピエロが乗っている空中ブランコに向かって飛ぶ。
剣をピエロの肩口目掛けて振り下ろすが、あっさりと避けられた。
「ピエロにタッチはダメダメ♪ でも、今回だけは特別だよ♪」
腕を掴まれ、背中合わせになるように捕らえられる。
ピエロが下の状態でトランポリンに飛び降り、テントの屋根を突き破るほど高く飛び上がった。
屋根を突き破っても勢いは衰えることなく、城の天辺まで飛んだかと思うと、ピエロがくるりと体を回転させた。
地上には、屋根の一部が破けたテントが小さく見える。
「ピエロの特別な切符♪ 特急だよ♪」
体が落下し始める。
地上まで何メートルあるかわからないが、こんな体勢で落ちれば確実に死ぬ。
ピエロを振り払おうと暴れるが、ガッチリと固められていて、とても外せそうにない。
「何故暴れるの? 夢の世界は楽しい――」
言葉を遮るように、城の壁を壊しながらバイクが飛び出してくる。
ピエロにバイクが直撃し、腕が少し緩んだ。
咄嗟に拘束を外し、ピエロを地面に叩き落とす。
「永宮ー! 頑張るヒーン!」
バイクが空けた穴からプフェーアトさんが手を振っている。
こちらも軽く手を振り替えしたあと、腰に差したままの鞘を手に持った。
城の中間ほどの高さにあった窓に鞘を投げ込む。
磁力の引き寄せる力をフルに使って、その窓に向かって突っ込んだ。
城の中にゴロゴロと転がりながら入る。
どうやら戦っている途中だったようだ。酒の瓶を片手に持って酔っ払っている男と、小学生ぐらいの双子らしき姉妹が向かい合っているところだった。
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