ep.45「十八番の突撃」
ほら貝を吹くような、開戦の合図がコロシアムに轟いた。
ストレッチを軽くして城壁を見上げたあと、溜息をついた。
「これ、どうやって超えますか?」
目の前に聳え立つ城壁は、とてもじゃないが飛び越えれそうにはない。
そう言うと、フュジさんは悪そうな笑い方をしながら腕を組んだ。
「このときのために、ワシと水樹チャンと開発してた、その名も"ダイナマイトガン"だ。おい、パズル!」
フュジさんが手を叩きながら叫ぶと、ガリガリの男が頭に手を置きながら歩いてくる。
「パズル、アレを出してくれ」
「はいはい、わかりました。ったく、みんな人遣いが荒いんだから……」
パズル、というガリガリの男が懐からパズルのピースを取り出した。
二十枚ぐらいのピースを慣れた手つきで組み立て、でかい筒が目の前に現れた。
「これがダイナマイトガンですか?」
「そうだ。破壊力は抜群で、この壁ぐらいなら一撃――おっと!」
フュジさんがいきなりリティさんの首ねっこを掴み、城壁の上の方に向かって投げた。
リティさんが首をかき切って空に血を撒き散らし、フュジさんがしゃがむように皆にジェスチャーする。
地面に倒れこむようにしゃがんだ瞬間、先ほどまで頭があった場所にレーザーが撃たれた。
あのまま立っていれば確実に頭を撃ち抜かれて死んでいただろう。
「これ、死なないような対策とかは……」
「ワシも親善合戦は何回もやってきたが、たまに瀕死になる奴は出るぞ。死人は出たことないから大丈夫だろ」
フュジさんがそう言いながら、城壁の上からレーザー銃を構えている男に向かって拳銃を撃つ。
城壁の上の男はすぐに身を隠し、城の中に戻っていった。
「"急がば回れ"……。さっさと突入しよう」
ヴォランさんが怪しげな本を読みながら言った。
フュジさんがダイナマイトガンに弾をこめて、着火する。
コロシアム全体が揺れるほどの轟音を轟かせながら、城壁に大穴を開けた。
「ブルッヒヒーン!」
大穴が開いた瞬間、バイクに乗りながら雄たけびをあげるプフェーアトさんが城の中に突っ込んでいく。そのバイクには、黒い包帯を腕に巻いている男も乗っていた。
次々と侵略隊のメンバーが入ろうとする中、遅れないように城の中に進む。
城の中に足を踏み入れた瞬間、周りの景色が突然変わる。
赤と白が交互に並んだ特長的なテントの屋根に、空中ブランコやトランポリンなどの道具が設置されている。
これは、誰がどうみてもわかる、サーカスの会場だ。
「ふむ……。これは最初から厄介な奴に当たったものだ」
横にいたリティさんが顎を触りながら言った。いつのまにか、他のフュジさん達はいなくなっている。
「ジャンジャン♪ 僕達楽しいサーカス団♪ 僕はサーカスの笑いもの、ピエロ♪」
赤くて丸い鼻をした、白塗りのピエロがワイヤーに乗って現れた。
テント全体をワイヤーに乗って旋回しながら、テントによく響く声で、リズムよく話す。
「君達、夢は持ってるかい? 持たなきゃ損だよ♪ いけないよ♪」
ワイヤーを掴んでいた手を離し、クルクルと回転しながらテントの真ん中に着地する。
スポットライトがピエロを照らし、観客はどこにもいないのに拍手と歓声が響く。
「僕が持たせてあげる♪ 夢への切符♪」
ピエロ特有の、ニッコリとしているが、奇妙な笑いを顔に浮かべる。
両手を前に突き出し、魔法のように、無数のナイフを手に出した。
「夢の世界はとっても高い♪ ピエロが連れて行ってあげる♪」
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