ep.43「防衛隊親善合戦」
「第三チーム、不慮の事態だったが、よくぞ全員無事に帰ってきてくれた」
ゼバル隊長が椅子から立ち上がってそう言った。
プフェーアトさんは腹の穴をふさぐため、入院しているのでこの場にはいないが、それ以外は全員揃っている。
「第一チームに追跡させたはずのヒュイド族もいたんですが……」
班長がこめかみの辺りを指でかきながら言った。班長が言っているヒュイド族は、ロジーのことだろう。
「ああ……第一チームか、うん……。全員酒の飲みすぎで中毒起こして入院してた」
「は?」
思わず口から声が漏れ出る。班長たちも、呆れきったような顔をしている。
ゼバル隊長も、かなり呆れているのか、頭を抑えながら言った。
「さらにもう一つ、アレの時期がやってきた」
「ゴミの解体ショーかしら?」
「それは是非ともやりたいが、残念ながら違う。防衛隊との親善合戦だ」
水樹さんのぶっそうな言葉を華麗にスルーした隊長。
班長とオーロさんが、親善合戦と言う言葉に眉をしかめた。その感じからして、あまりいいものではないと悟る。
「一週間後だ……。皆、病院の予約はしておくように」
親善なのに病院の予約をしなければいけないのか。
そう思いながら、ゼバル隊長の部屋を後にした。
オーロさんが電話で病院に連絡を取っている。一階層丸ごと貸切など、恐ろしい会話をしている。
水樹さんに肩を叩かれ、付いて来いと促される。
「永宮クン、防衛隊との親善合戦だけどね。あんなもんただの戦争よ戦争。……おっと、忘れるとこだったわ、これ」
水樹さんに、鞘に入った状態の剣を渡される。
以前使っていたものは、ロジーと戦っていたときに壊れてしまった。新しく作ってくれるように、頼んでいたのだ。
「私の家に住み着いたフールの岩製よ。凄く硬いのにとんでもないレベルで衝撃を吸収するとかいう、意味のわからない材質だったわ」
鞘から少しだけ剣を引き抜く。
以前のものよりも輝きが増していて、いかにも切れ味が良さそうだ。
鞘も、灰色一色だったものが、真紅に塗りなおされている。ちょっとダサい。
「衝撃を吸収する……一体どれぐらい吸収するんですか、水樹さん」
「そうねえ。真正面から時速千キロの鉄の塊と当たっても、ビクともしないぐらいかしら」
吸収しすぎでは?
そう思いながら、剣を腰に挿した。やはりこの感覚がないと、少し落ち着かない。
「じゃ、一週間後の親善合戦、お互い頑張りましょうね。私達もバラバラに動くから、他のチームとの交流もあるかもしれないわよ」
手をひらひらと振りながら、廊下を歩いていく水樹さん。
腰に差した剣を強く握りながら、一週間後の親善合戦の拭いきれない不安を抑えた。
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