ep.41「新人アルバイト」
「また会いましたね、キル・テュエマタール」
フラムにロジーを渡し、班長に向かって一礼するルマル。
「再び僕の姿を現した挙句、仲間までも傷つけて。お前自身で来たらどうだ? こんな雑魚を寄こすんじゃなくて」
班長が、左手に持った何かをルマルに向けて投げつける。
明るい場所に出てきたことで、それがよく見えてしまった。
赤い鮮血が滴り落ちる、丸い肉の団子だ。
「今回は、あなた方が私達のほうに攻め込んできたんですがね。ま、いい機会なので仲間の強さを試させてもらいました。しかし、こちらの手違いで、シュバルツ・プフェーアトが私の元に来てしまったのです」
ゆっくりとお辞儀しながら、そんな言葉を述べたルマル。
血が滴れ落ちる肉団子を拾い上げた。
「本来、水樹のりえとシュバルツ・プフェーアトをこの団子になっている仲間と戦わせる予定だったのですがね。これでもかなり強いんですよ? この子」
そういって、肉団子を雨の降る外へ投げたルマル。雨に打たれて、肉団子がバラバラに弾けた。
班長の姿を見るが、傷どころか土一つ付いていない。強そうなのは知っていたが、そこまで強いとは思っていなかった。
「……さっさと消えろ。今回はプフェーアトの傷が酷すぎる」
「おや。まあ、言われなくても帰るつもりでしたが。フラム、行くぞ」
そう言うと、ルマル達は消えた。
班長がプフェーアトさんに近づき、応急手当をし始める。
そんなに酷い怪我なのか? と思い近づいてみたら、腹に大きな穴が空いていた。体の向こうの地面が見える。
「プフェーアトはしぶといからな。まあ、腹の怪我だけ処置すれば大丈夫だろう」
班長がそう言いながら、プフェーアトさんの腹の穴の処置を終えた。そんな適当で大丈夫なんだろうか。
……そういえば俺も体がハチの巣みたいになっていた。じゃあ大丈夫か。
「オーロ、宇宙船で帰れそうかい?」
班長がその問いかけに、オーロさんは首を横に振った。
「治そうとしてみたけど、無理だね~。適当に宇宙船奪って帰るしかないね~」
班長はその言葉に、うなりながら辺りを見回した。そして、フールの方を指差しながら言った。
「その岩人間、どうするの? 周りに倒れているのは全員死んでるっぽいし」
フールの同族たち、ずっと倒れてると思ったら殺されてたのか。多分、水樹さんがほぼ全員やったんだろう。
班長の言葉に、フールはビクッと反応した。
「まあ僕としてはここで殺しちゃってもいいんだけど……」
「班長、そこにいるフールは命の恩人なんです。殺すのは止めてくれませんか」
右腕に持った剣をギラつかせながら、あっさりと言い放った班長。本当にフールが殺されかけないので、止めておく。
「でも、どうするの? この星に置いてっても一人きりだし。地球に連れて帰っても、ちゃんとした目処が立たないと奴隷になっちゃうよ」
班長の言葉に、顎を押さえながらうなる。確かに、何か方法を考えないといけない。侵略隊に入れるにしても、弱すぎて無理だ。
「う~ん…… あ!」
水樹さんの方を見て、いい方法を思いついた。
――――――――
人が通る大道路がよく見える、木造の暖かい雰囲気のカフェ。
屈強な体を持った主人が怖すぎて入れないと評判だった。
しかし、紫色の髪を伸ばした片言の美人な女性がアルバイトとして働き出す。
看板娘と化したアルバイトの女性が大人気で、今では連日満員になるほどの有名店になっている。
「ふ、ふざけんナー!」
今日も接客をする、アルバイトの声が響く。
改善点などあればご指摘いただけると嬉しいです。