ep.40「悪魔との再会」
全身を雨が貫く。
先ほど、ドバドバと出ていたアドレナリンが切れてしまったのか、激痛が徐々に全身に走りはじめる。
一粒の雨が体を貫通するごとに、体が機関銃に撃たれたかのように跳ねる。
スローモーションに感じ始めた雨を眺めるのを止め、ロジーの方を見る。
全身から血を流しながら、体を跳ねさせている。これなら、大丈夫そうだ。
視線を雨の方に戻そうとした瞬間、ロジーの体を赤い何かが包み込む。
思わず目を剥いたときには、赤い何かと共にロジーの体は消えていた。
そのとき、足を何かに掴まれ、思い切り引っ張られる。
足の方を見ると、身を乗り出したフールが足を掴んでいた。
建物の中にゴロゴロと転がりながら入る。
スローモーションに感じていた世界が、元の速さに戻る。
「永宮クン、大丈夫?!」
水樹さんが駆け寄ってくる。
全身から吹き出る血を簡易的に止血してもらう。
「ロジーがやられるとは……。少し想定外だったかな」
突如、おぞましい気配と共に男の声が聞こえてくる。
頭だけを動かし、声がしたほうを見る。
赤を基調とした民族的な衣装に、緑色の髪。
肩に、ぐったりとした血まみれのロジーを抱えている。
首にいくつもの頭蓋骨のネックレスをつけている。
「なっ……! ルマル・ジュスティス!」
ヒュイド族の族長が、おぞましい気配を身にまといながらそこに立っていた。
「君は……あの星のときの子か。あのときからは考えられないほど強くなっているね」
体を水樹さんの肩を借りて無理やり起こす。
足を無理やり動かして、ルマルに向かって走る。
右拳を固め、顔面めがけて殴りかかる。
「その傷だらけの体で挑んでくるのかい? まあ、ロジーを倒した賛辞代わりに、少しだけ優しくしてあげよう」
右のこめかみに拳がめり込む。
視界がぐるんぐるんと回り始め、壁に背中からぶつかる。
血を口から吐き出してその場にうずくまってしまう。
「そうそう、君達に返しておくよ。シュバルツ・プフェーアトだ」
ルマルが、どこからともなくプフェーアトさんを連れてくる。
地面に落とされても全く動かず、全身の服が血の色に染まっている。マスクからもかなりの量の血がにじみ出していた。
駆け寄ろうとした瞬間、すぐ横の壁が吹っ飛ぶ。
ゴロゴロと転がりながら、炎の塊のような赤い少年が部屋の中に入ってくる。
「……やっぱり、お前もいるんだね~」
服のあちこちを少し焦がしたオーロさんが部屋の中に入ってくる。
転がって入ってきた少年は、体勢を立て直したあと、ルマルの傍に寄っていった。
「てめえ! もう一回だ、俺が勝つまでやるぞ!」
「落ち着けフラム。もういい」
空いた片手で、フラムと呼ばれた少年を抑えるルマル。
「少年、大怪我だけど……ああ、その感じだとひとまずは大丈夫そうだね~」
オーロさんが近づいてきて、怪我の具合を見る。水樹さんの処置を見た後、煙草を吸い始めた。
「オーロさん、族長が近くにいるんですよ? 煙草なんか吸ってて……」
「大丈夫だね~。もうすぐ来るからね~」
瞬間、オーロさんが入ってきた穴から一本の剣が飛び出してくる。それに続き、続々と飛び出してくる剣たち。
最後には、足音を鳴らしながら一本の剣を右手に、左手に何かを持った班長が出てくる。
「また会ったな、ヒュイド族の族長……」
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