表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/146

ep.39「三人で」

「すごいねぇ! 前よりとっても強くなってるよ!」


 ロジーが手を叩きながら言った。

 ふざけるな、と本気で言いたい。こっちはもう息が絶え絶えなのに、向こうはまだ息一つ切らしていない。それに、壁にヒビを入れる勢いで当てたのに、全くダメージが入っている様子がない。

 先ほどのかかと落としで皮膚が切れたのか、額に血が垂れる。


「その様子だと、君の臓物が見れるのはもうすぐだ――おっと!」


 ロジーが右腕をいきなり上げる。そして、後ろに振り返った。


「いきなりは酷いんじゃないかなぁ?」

「それでも避けてるでしょうが……!」


 水樹さんが多少傷ついた姿で、右手で何かを受け止める。きっと、以前見せた光を透過させて見えなくする方法だろう。黒い円盤がスゥーと浮かび上がった。


「クラエ!」

「おっと。へえ、もう全員倒したのかぁ」


 ロジーが、ところどころ削れた岩を纏っているフールの拳を受け止める。そして、辺りを見回した。

 先ほど大量に現れたフールの同族が、もう全員倒れている。


「うーん……。まぁ、君達三人ぐらいならいいか!」


 フールの体を持ち上げ、先ほどヒビの入った壁のほうへ投げつける。

 壁のヒビが、フールが当たったことによって更に大きくなる。


「永宮クン、私達は援護に回るわ!」


 その言葉を聞きながら、剣を杖にして立ち上がる。いくら強かろうが、諦めるわけにはいかない。

 ロジーは強敵で、しかもかなりのタフだ。プフェーアトさんの攻撃を首にまともに喰らっても動けるくらいに。

 

 そんなゴリラみたいな奴を倒すには……

 ヒビが大きくなった壁の方を見る。あの壁の向こうは確か、雨が降る外だったはずだ。

 鞘から剣を抜き、ロジーの方に再度構える。

 あいつを倒すには、どうにかしてあの壁の向こうへ追い出すしかない。


「ロジー!」

「おぉ。じゃ、再開しよっか!」


 右手で剣を持ちながら、ロジーに向かって走り出す。

 繰り出してくる拳を、全て剣で弾き返す。一発弾くごとに、手が痺れて剣を落としそうなほどの衝撃が走る。

 フールがロジーを後ろから殴りつけようとするのに合わせて、ロジーに袈裟斬りをしかける。


 ロジーは二人分の攻撃を右手と左手で受け止めた。

 剣を離し、ロジーのみぞおちにパンチを入れる。顎にもついでにアッパーカットを決めて、剣を奪い取ってロジーの体から離れる。


「いったぁ……人の顎を殴るなんて酷いなぁ」


 どの口が言うか。お前は人の顎を殴るどころか骨を粉砕しただろ。

 フールもロジーから離れる。


 ……そういえば、フールの岩って何か鉄っぽいよな。磁力で引き寄せれば反応するんじゃないか?

 剣を鞘に納め、フールに切っ先を向けて磁力を発生させる。

 思ったとおり、フールの体が剣にくっつく。というか、フールが見た目に関わらずかなり軽い。


「オワ! ナンダコレ!」

「ちょっと我慢しろよフール!」


 両手で剣を持ちながらロジーに向かって走り出す。


「うわあぁ! 何それ、すっごく興味湧くよぉ!」


 ロジーが目をキラキラと輝かせながら、拳を繰り出してくる。

 全て剣の先に付いたフールで弾く。ハンマーみたいな感覚だ。とても不思議だが、手に衝撃が全く伝わってこない。


 ロジーの両腕を上に跳ね上げさせ、無防備になったところにフールを叩き込む。かなりシュールな状況だが、威力は絶大だ。

 ヒビが入った壁の方に再び吹っ飛ばす。ロジーが頭から血を流し始めた。

 壁のほうももう耐えられなくなったのか、外と繋がる大穴が空いた。


「モ、モウカンベンシテクレ!」

 

 フールが痛そうな声をあげた。よく見ると、身にまとっている岩がかなり砕けている。

 磁力を切り、剣の先からフールを降ろす。


「まさかこの星の住民に武器の使い道があったなんてねぇ。骨が何本か折れちゃったよぉ」


 胸の辺りを押さえながら、こちらに近づいてくるロジー。

 このまま押し込めば、すぐに外だ。しかし、こっちの狙いは向こうももう気づいているだろう。ここが最後の正念場だ。


「おおおおおおおお!」


 雄たけびを上げながら突っ込む。

 ロジーはその場で足を大きく開き、体の重心を下げた。

 

 ロジーの打撃が、雨のように迫ってくる。両手で絞るように持った剣で弾く。

 さすがに焦っているのか、拳の一つ一つがさっきよりも重い。

 手が耐え切れなくなったと同時に、剣のほうも耐え切れなくなり、音を立てて砕け散った。

 

「あはぁ! 残念だけどもうお終――い!?」


 突然、ロジーの右足が血しぶきを上げながら宙に舞う。

 宙に待ったロジーの足の横に、水樹さんの黒い円盤が姿を現した。


「ありがとうございます、水樹さん!」


 地面に落ちた剣の破片を手で掴む。手から血が流れ出るが、全く痛みを感じない。

 足を斬られ戸惑っているロジーの体を何度も斬りつける。だが、さすがと言うべきか、すぐに落ち着きを取り戻し破片を握っている手を掴まれる。


 ここで止められたらもう勝つチャンスはない。

 右腕を掴まれたまま、血まみれのロジーの体に突進する。



 ロジーと共に、雨が降る外に身を投げ出した。





改善点などあればご指摘いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ