ep.36「出発」
「その山の向こうにはどう行けばいいんだ?」
「昔は外ヲ通ってイケたんダがナ。洞窟ノ奥かラモいケるガ、おススめハしナい」
フールが暗闇に包まれた洞窟の奥を指差した。
「山ノ向こウ側と洞窟ノ間に、変ナ奴らガ居座ッてやガルんダ。チょウドお前と同じ姿だヨ。あイツらハ、俺の仲間ヲ……」
フールは言葉を途中で区切り、悔しそうな表情をした。
そして懐から、いつか見たわっかを取り出した。
「コレヲ付けタ仲間ガ全員変にナっタンだ」
「それ、見せてくれ」
手に持っているわっかを受け取り、まじまじと見る。
テネーブル星の住人がつけていた洗脳する道具と全く同じだ。
見終わった後、フールに返す。
「これを持っていたのが、フールの言うアイツらなんだな?」
「ソウだ」
剣を杖にして立ち上がり、洞窟の奥に進む。
フールが目の前にたって通せんぼをしてくる。
「ヤメロっテ! 死ぬゾ!」
「仲間と合流するためには、どうせそこを通らなきゃいけないんだ」
「いヤ、それデモだナ……」
フールの体を押しのけて洞窟の奥に進もうとする。
肩をいきなり掴まれて、搾り出すようなフールの声が後ろから聞こえてくる。
「ウ~……ワかッタ。俺モ行く!」
「お、おお…。それは嬉しいけど、肩に爪が刺さってるから離してください痛いです」
謝りながら手を離すフール。
手を横に振りながら必死に謝ろうとするが、壁に手をぶつけて痛がっている。
本当に大丈夫だろうか。
「さっきから思ってたんだけど、その変な話し方はわざとなのか?」
「ア。スまん、頬二つイテるコレ取ってクレ」
フールが頭を下げて、両頬についている石を爪で叩いた。
あまり気にしていなかったが、地味に身長が倍近くあるのに驚いた。
両手で力をこめると、意外にも簡単に取れた。
「あー。どうダ?」
「おお、さっきよりマシになった」
「あれついてると変な声になるんだよナ。取るのよく忘れるんダ」
フールの頬から取れたこぶし大の石を壁に当ててみる。
かなりの硬度があるようで壁のほうが削れた。
念のためにポケットに入れておいた。
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