ep.35「雨降る星」
目が覚める。
墜落のときの衝撃で少し気絶していたようだ。
立ち上がってから、自分の剣がしっかりとあるのを確認する。
辺りを見回す。
真っ暗な洞窟で、外では雨が降っている。
とりあえず、外に出ようと歩き始める。
「おイ、危ネえから外に出るんじゃねエ」
右足に力をこめて、後ろの声がしたあたりに力強く飛ぶ。
空中で回転しながら、左足で声がしたあたりを蹴る。
「ウわッ! 止マれ止まレ!」
暗闇に目が慣れはじめる。
地面に着地し、声を出している何かを睨む。
褐色の肌に、紫の髪を長く伸ばした、女性…?
体の大部分が岩で覆われ、手の部分には鋭い爪がついている。
「誰だお前! ヒュイド族か?!」
「ヒュイド族っテのが何カ知らねエけド、俺ハお前の恩人ダぞ!」
手についた鋭い爪を開きながら、岩人間が言った。
剣を抜いて更に警戒を強める。
「とイうカ、お前何なんダ? いキなリ空かラ降っテきテ…」
「宇宙船をいきなり攻撃されたんだよ。お前の仕業か?」
そう言うと、岩人間が顔と手を横にブンブンと振った。
「違ウ違う! …何カ疲れタナ、お前悪イ奴じゃなさソウだシ」
岩人間が、地面に勢いよく座る。
そして自分の右側をポンポンと叩いた。手についた爪のせいで地面が削れて、どっちかというとガリガリという感じだが。
「俺の事を助けてくれたのは、ありがとう。他にも誰かいなかったか?」
「いヤ。山の向こウ側に何カ落ちテイったノハ見えたガナ」
岩人間は、壁にもたれかかって溜息をついた。
その姿を見てなんだか気が抜けてしまい、地面に座ってしまう。
それを見た岩人間は嬉しそうに笑った。
「フール、ダ。俺ノ名前」
「そうか。フール、洞窟の外は危ないっていってたが、どうしてなんだ?」
「雨が降ルからダ」
雨?
洞窟の外を見る。
雨が地面に当たる、心地よい音が響くだけで特に何も感じない。
地面の様子を見る限り、硫酸のような劇薬の雨という感じでもない。
「そレを少シだケ外に出しテみナ。離スなヨ」
フールの言うとおり、鞘がついた剣の先を少しだけ外に出す。
鞘に雨が当たるたびに、手に強い衝撃が走る。
すぐに洞窟の中に引っ込めるが、その少しの間だけでも手が痺れて使い物にならなくなる。
この感触は、一度アクアード星で味わった。
鉄の弾を剣で受けた感触だ。
「こコはナ、そンナ感ジの雨ガずっと降ルんだよ」
弾雨という言葉がある。
まさにそれを再現したかのような、不思議な現象を身をもって体感した。
善の心がやられました。
改善点などあればご指摘いただけると嬉しいです。