ep.34「墜落」
いつもどおりの真っ白の壁に真っ白な床。
第三チームの六人が乗った宇宙船は、いつもどおりの安全運転だ。
「水樹、あのマイクロビキニもう捨てたほうがいいと思うよ」
「うるさいわね……」
班長と水樹さんがソファーに座りながら話す。
相変わらず二日酔いで二人とも頭を抑えている。
「班長、これでも見てちょっと休むヒン!」
「プフェーアト、一体何を――」
プフェーアトさんが班長の前に一枚の写真を持っていく。
顔をあげてそれを見た班長。耳まで顔を真っ赤にして、倒れてしまった。
「プフェーアトさん、何ですかそれ?」
「テネーブル星で見つけた写真だヒン。これを見せたら面白いように班長が気絶するヒン!」
受け取った写真を見る。
薄い緑色の髪を腰まで伸ばした美しい女性だ。
黒い水着を上下に着て、恥ずかしそうに体を抑えて顔を赤らめている。
肌は透き通るように綺麗で、写真越しでも見とれてしまいそうだ。
「……これ総帥の水着姿っぽいですね。何でテネーブル星に?」
「机の引き出しに入ってたヒン」
「ほう。これはまた素晴らしい女性ですね。あの子かもしれません」
英史が肩の辺りから写真を覗いてくる。
プフェーアトさんは台所から水を持ってきて、水樹さんに渡した。
「英史、総帥には何もするんじゃないヒン。やるなら水樹だヒン」
「僕に幼女趣味はない」
「そこの二人! ふざけたこと話してるんじゃないわよ!」
水樹さんが英史とプフェーアトさんに飛びかかる。
さっと英史が避ける。
結果、プフェーアトさんと水樹さんの二人のもみ合いの喧嘩が始まった。
写真を机に置いてから運転席の方に向かう。
「オーロさん、目的地見えましたか?」
「いや、まだだね~。もう少しのはずなんだけどね~」
煙草を吸いながら、足で運転するオーロさん。
こんな適当な運転でも、全く揺れない安全運転なのだから凄い。
「今回の作戦、珍しいですよね。総帥直々って」
運転席の片方に座りながら、オーロさんに話しかけた。
今回の作戦は、反旗を翻した者たちの処理だ。ヒュイド族を優先しなければならないときに、総帥直々の命令と言うこともあって少し違和感を覚えたのだ。
「ま、そういうこともあるんだね~」
オーロさんが胸ポケットから煙草の箱を取り出す。
箱を開けて煙草を一本咥えようとしたが、どうやらもう切れたようだ。ゴミ箱に箱を投げ捨てる。
「少年、悪いけど奥の倉庫から煙草を取ってきてくれるか~い?」
「わかりました」
オーロさんが煙草を灰皿に押しつけた。
二人の喧嘩を上手く避けて、宇宙船の奥に行く。
「煙草までパズルのピースにされてるのか…」
四つのピースを組み立て、煙草を出す。
念のため三つほど持って運転席に戻ろうとする。
瞬間、宇宙船が大きく揺れる。
アラーム音がけたたましく響く。
倉庫を照らす白いライトが赤いライトに変わる。
倉庫から出て運転席に走る。
「何があったんですか?!」
「何者かに攻撃を受けたんだね~!」
再度、宇宙船が大きく揺れる。
体制を崩し、地面に転がる。
「ぐっ、ブースターが!」
オーロさんがハンドルを手で強く握る。
思い切り左にきった。
ブースターを失った宇宙船は、灰色の空気に覆われた星に向かう。
「少年、捕まるんだね!」
オーロさんがシートベルトを締め、手を伸ばした。
その手を握るために、必死に手を伸ばす。
星に入った瞬間、雨に打たれる。
その雨は宇宙船を粉々にしてしまう。
突如、宇宙船がバラバラになる。
自分の剣を空中で掴み、叫ぶ。
「オーロさん、後で集まりましょう!」
その声にオーロさんは返事をしなかったが、大きく、遠めでも分かるように頷いた。
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