ep.28「救出」
「ブルッヒヒーン!」
プフェーアトさんが雄たけびをあげながら飛び上がる。
ワイヤーが外れた両手を振り回しながら着地した。
「間一髪……」
冷や汗を服の袖でぬぐう。安堵のため息を吐き、木の筒を投げる。
気分が高揚しているのか、振り返らずに自分の武器を二本指で受け止めようとするプフェーアトさん。
木の筒が後頭部に当たる。頭を押さえながら地面に落ちた武器を拾った。
「永宮、まだまだ糸のつけ方が甘いヒン。本物の糸使いっていうのはこうやるヒン」
別に糸使いになろうとは思わないんですけど。
レーザー銃の照準が全てプフェーアトさんに集中する。そんな中でも冷静なまま、やじりを地面に深々と突き刺した。
武器を持った右腕を数回振った瞬間、壁についていたレーザー銃の銃身が全て切断される。
大きな音を立てながら落下する銃身を振り返りもせず、ロジーの方を向いた。
「ロジー…って言ったヒン? 大人しく降伏すれば命の保障ぐらいはするヒン」
「あははぁ。さすがに侵略隊二人同時はキツイかな?」
「そんな舐めた態度取ってると、腕が一本飛ぶヒン。それでもいいヒン?」
プフェーアトさんが一歩進むたび、ロジーが一歩後ずさる。顔が引きつりながら冷や汗をかいているロジーの様子を見るに、本当に怖がっているようだ。
壁に背中をつけるロジー。その数メートル先にはプフェーアトさんが立っている。
「……あはぁ」
ロジーが笑いを漏らしたかと思うと、いきなり右手で壁を殴りつけた。
部屋の白い照明が全て消え、青い光が部屋の中に満ち始める。
ロジーがいきなり地中に消えたかと思うと、地面から大きな黒色のシャトルのようなものが現れた。
「あはははは! 少しだけ私のほうが上手だったみたいだね!」
シャトルのブースターに火を噴射し始める。
プフェーアトさんが糸でシャトルを斬ろうとする。しかし、表面に軽く傷がついただけに終わった。
足でブースターの辺りを思いきり蹴り上げるが、ビクともしない。
「無駄だよぉ、とーっても硬い素材を使ってるからね。あはははは!」
「ふ~ん。そりゃあさぞかし硬いんだろうね~」
シャトルの横っ腹あたりにオーロさんがいきなり現れた。恐らく、例の武器を使っているのだろう。
空中で回転しながら、シャトルにかかと落としを決めた。
「おお、本当に硬いね~」
かかと落としが決まった場所が大きくへこむ。
ブースターの片方が衝撃で壊れるが、シャトルは止まらない。
壁を破壊し、黒いガスの中へ飛んでいってしまった。あの速さなら数十分もあればこの星から出てしまうだろう。
ガスに阻まれ追いかけることはできそうにない。
「……ちょっと、壁の穴からガス入ってきてますよ!」
「ん~? あぁ、早く逃げないとやばそうだね~」
「やばそうじゃなくてめちゃくちゃやばいヒン! 永宮、水樹と班長運ぶの手伝うヒン!」
オーロさんが高笑いしながら逃げていく。
プフェーアトさんが班長を肩にかつぎ、俺が水樹さんをかつぐ。
「オーロ! ちょっとぐらい手伝うヒン!」
プフェーアトさんの怒声が部屋の中に響き渡った。
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