ep.27「ロジー」
「いったぁーい!」
ロジーの声が部屋の中に響き渡る。
「…首の骨折りましたよね?」
「折るどころか粉砕するレベルで蹴ったヒン」
首を回しながら歩いてくるロジー。
プフェーアトさんが身をよじり、何か落とす。
「俺の武器だヒン。永宮の剣じゃまだこのワイヤーは切れないから、チャンスを見てそれで切るヒン」
「何話してるのかなー二人ともー!」
ロジーが部屋の中央辺りで歩みを止める。
懐から小さなリモコンのようなものを取り出した。
「さっきも言ったけど私戦うの苦手なんだぁ。だから、ちょっと卑怯だけど数で攻めるね」
ロジーがリモコンのボタンを押す。
壁から大量のレーザー銃がガシャがシャと音を立てながら現れる。
赤いポインターが体を一瞬で多い尽くす。
「もちろん私には絶対当たらない特別製だからね」
咄嗟に横に転がる。旧式の銃ならともかく、レーザー銃は弾を見てからはじくなんて芸当は無理だ。
壁の傍を走りながら必死に避ける。
「大変そうにしてるけど、もちろん私も殴るからね?」
ロジーが拳を構えた状態で目の前に現れる。
瞬間、頭めがけて放たれる右ストレート。視界がロジーの手で埋まる。
頭を捻りながら右足を軸にして、背中をロジーに向ける。
そのまま背中で体当たり。
右手でロジーの足を掴み、ちょうどレーザー銃の盾になるようにする。
「いやん、ちょっとどこ触ってるのよぉ!」
ロジーが足の右手を外す。
一発殴った後、俺の側頭部を両手で持った状態で逆立ちをする。
重力の勢いを使った右ひざで顔面を蹴られる。
こちらも鉄板を仕込んであったのか、膝とは思えないほど堅い。
「絶対戦闘苦手じゃない…」
「何言ってるのぉ。こっちはかよわい乙女よ?」
体のいたるところに鉄板仕込む乙女がいてたまるか。
雌ゴリラのほうが似合っていると心底思う。
「ほーら、私だけじゃなくて銃のほうにも気をつけないと」
ロジーが後ろに飛んで逃げていく。
再び体中が赤いポインタで埋め尽くされた。
腰に差した剣を鞘ごと抜き、柄頭を壁にピッタリとつける。
剣の磁力をフルパワーに生かし、鞘を吹っ飛ばす。
もちろん俺の体も鞘と一緒に吹っ飛んでいく。
「おー! まるで曲芸だね!」
ロジーが感嘆の声をあげる。凄く煽られた気分だ。
プフェーアトさんの武器をポケットから出す。
木製の筒の先に鉄製のやじりがついている。やじりには恐ろしいほどの数の返しがついていて、刺されば並大抵のことがなければ外れなさそうだ。
やじりを引っ張ると、視認するのが近くからでも難しいほど細い糸が伸びる。
地面にやじりを突き刺し、プフェーアトさんのワイヤーに引っ掛ける。
「ちょっと待ってくださいプフェーアトさん。これどうやって糸引っ張って切るんですか」
「そ、その下のボタンを強めに押すヒン!」
「何で三つもボタンあるんですか?! ちょ、レーザー銃が――」
プフェーアトさんを巻き込み、レーザー銃の弾がこちらに放たれた。
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