ep.26「発見」
オーロさんと別れ、廊下を走り続ける。
右に曲がり突き当たりの扉にタックルをする。
扉ごと部屋の中に倒れこむ。
ライトが天井に大量についた広い部屋だ。
「永宮ー!」
プフェーアトさんたち三人が空中に吊るされている。
両手首をワイヤーで縛られているようだ。プフェーアトさんが体を必死によじらせている。
班長と水樹さんは下を向いたままぐったりしている。気絶しているのだろう。
「プフェーアトさん、特殊なプレイですかー?」
「冗談言ってる場合じゃないヒン! ヒュイド族だヒン!」
プフェーアトがそう叫んだ瞬間、後ろから女性の高い声が聞こえてくる。
「あ、まだいたんだ。私戦うの苦手なんだけどなー」
咄嗟に右手で剣を抜く。
振り返りながら後ろの声が聞こえた辺りをなぎ払う。
ガキン、と金属がぶつかり合う音が鳴る。
「ちょっと! いきなりは失礼じゃないかな」
眼鏡をかけた黒髪の女性が、右腕の前腕で剣を受け止める。
頭を両手で掴まれ、そのまま頭突き。
少しよろめいた瞬間顎を足の先で蹴り上げられる。
靴の先に鉄板を仕込んでいたようだ。顎の骨が砕ける音が体に響き渡る。
「…あれ? そういえば君だれ?」
黒髪の女性が首をかしげながら言った。
地面に倒れこみ頭だけを女性の方に向ける。
顎の骨が折れたせいか、口が開かない。鼻で痛みを逃がすように必死に呼吸を続ける。
「あはは、犬みたいだね。まあ君の素性は興味ないし別にいいんだけど」
何が戦闘苦手だよ…。
黒髪の女性はプフェーアトさんの方に向かって歩いていく。
「君がシュバルツ・プフェーアトだね。私の名前はロジー・ビオテクノ。ロジーって呼んでくれていいよ」
ロジーという女性がプフェーアトさんの前に立つ。
手をうねうねと動かしながら興奮した様子で言った。
「私気になることはとことん調べたいんだぁ! 君のマスクの下はどうなっているのかな? とても気になるよ!」
ロジーがプフェーアトさんのマスクを引っ張り始める。
正直言って見たいのは凄く同意する。
「や、やめるヒーン! 見たってなんも面白くないヒン!」
「ちょっとだけ! 先っぽだけでいいからさぁ!」
「それは男が使う言葉ヒン! 永宮ー!」
顎から伝わる痛みを我慢しつつ立ち上がる。
剣を右手に持ったままロジーに斬りかかる。
「だから君に興味ないんだって。ちょっとどいてて!」
背後から斬りかかろうとした瞬間、ロジーのかかとが顎めがけて飛んでくる。
咄嗟に頭を上に向けて避ける。何で顎ばかり狙ってくるんだろう。
左手で腰に差した鞘を抜き取り頭めがけて振りかざす。
「しつこい!」
右側頭部にハイキック。
ハイキックから流れるように右正拳突き。
食らったのはもちろんこっちだ。再び倒れこむ。
「やっぱり君は殺しとくべきかな? 邪魔しかしないし」
止めを刺すために近づいてくるロジーの足音がする。
頭のすぐ近くで足音が止まる。
「さよな――ら?!」
ロジーの片足を掴み、そのまま持ち上げる。
いつぞやの族長みたいにできたらいいのだが、さすがに無理だ。
しかし、今回は持ち上げるだけでもいい。両手が使えなくとも、両足が使える心強い仲間が近くにいるのだから。
「永宮! そのまま持っとくヒン!」
プフェーアトさんの蹴りが空気を切る音を鳴らす。
力強い蹴りが、体を持ち上げられたロジーの頭に命中する。
嫌な音と衝撃が掴んでいるこっちにも聞こえてくる。
足を離すと、ロジーはそのまま壁のほうへ吹っ飛んでいった。
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