ep.25「暗闇の中の建物」
バイクの後部座席から降りる。
オーロさんがエンジンを止めてバイクから降りた。
宇宙船に備え付けてあったバイクを使い、目的地に来た。バイクに貼られていた値札には零がいくつも並んでいたが、緊急時なので気にしないことにした。
視界の右上には赤丸が三つ、少し離れたところに固まっているのが見える。
「…しかし、これはまた凄いね~」
オーロさんが目の前の建物を見上げながら言った。
巨大な扉がついたコンクリートのような材質を使った建物。窓は見える範囲では付いていない。
「明らかにこの星の住民じゃ作れないですよね」
「そうだね~。十中八九ヒュイド族だろうね~」
オーロさんが巨大な扉に近づく。
握りこぶしを構えて、扉を殴る。こぶし一つ分の穴が扉にできた。
豪腕だ。というか、ゴリラだ。いや、ゴリラでもここまで強くはないだろう。化け物だ。
堅そうな材質の扉に穴を作ったオーロさん。
穴から建物の中を覗き込む。
「中は大丈夫そうだね~。少年、ちょっと待っててね~」
オーロさんがそう言うと、足元から光の粒子のようになる。
足から腰、腰から胸、胸から頭という風にどんどんと消えていく。
あれがオーロさんの武器で、第一チームの開発担当に作ってもらったらしい。水樹さんの武器は肌にあわないそうだ。
扉が金属音をあげながらゆっくりと開く。
中に入り、扉を閉める。
「防護服は動きにくいね~」
オーロさんが防護服を脱ぎ始めたのを横目に、こちらもヘルメットを外す。
脱いだ防護服は近くに畳んで置いておいた。
この広い部屋には入り口の巨大な扉と普通の大きさの扉しかない。
扉に手を掛け、ゆっくりと開く。
長い廊下に大量の扉がある。軽く十は超えている。
そして、心がとてもざわつく。ラーヴ星で感じた嫌な予感と同じ感覚だ。
「オーロさん、嫌な予感がします」
「奇遇だね~少年。嫌な予感っていうか、音がするね~」
全ての扉からドンドンと叩く音がする。
扉がへこみ始め、蝶番ごと扉が吹っ飛ぶ。
外で先ほど出会った四足歩行の黒いもやが大量に出てくる。
「げっ!」
「少年~。ここは抑えとくから先に三人を探すんだね~」
オーロさんが一歩前に進む。
その背中を見届けたあと、振り返って反対側の廊下を走った。
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