ep.24「暗闇の中に」
「ずっと歩いてばっかりだヒーン…」
プフェーアトさんがつまらなそうに言った。
宇宙船から歩き出してかなりの時間が過ぎた。
特に何も起こることがなく、話題もないため全員が静かに目的地に向かって歩いていた。
「暗闇の中で何も起こらず、話さずに歩くっていうのは結構気が滅入りますね…」
「まあ、何も起こらないのが一番だね~。暇ならしりとりでもするか~い?」
真横で歩いているオーロさんが言った。
プフェーアトさんは地面の砂を蹴りながら歩いている。
「オーロはしりとりでずっと"ぷ"で攻めてくるから嫌だヒン…」
「プフェーアトも"り"で攻めてくるからお互い様だね~」
「結構しりとりやってるんですね二人とも…。水樹さんもやるんですか?」
水樹さんに話しかける。
しかし、返事がない。
「水樹さん? 水樹さん!」
「少年、冷静になるんだね~。班長、嬢チャンを…」
オーロさんの言葉が止まる。
「オーロさん…?」
「少年、今すぐ宇宙船に撤退だね。班長と嬢チャン、プフェーアトの反応もない」
視界の右上にある赤丸を見る。
出発するときは確かに赤く輝いていた五つの丸が、今は三つしかない。
おまけに三つのうちの一つもかなりの速さで遠ざかっていっている。
「追いかけましょう! 今ならまだ間に合います!」
「正直いって無理だね~。それより、もっと近くに寄るんだね~少年」
オーロさんに引き寄せられる。
肩をがっしりと掴まれたまま辺りを見回す。
ガスとは違う、黒いもやのようなものが四足歩行でこちらに向かってくる。
四足歩行の黒いもやに、いつの間にか取り囲まれていた。
「テネーブル星の住民…。少年、飛ぶから少し動かないでね~」
オーロさんにいきなり体を担がれる。
小脇に挟まれるような感じだ。
「オーロさん、いきなり何を――え?」
暗闇の中から一変、白いライトの明かりが目に飛び込んでくる。
細く目を開ける。
「俺の武器の効果だね~。とりあえず宇宙船の中に逃げたけど、いずれさっきの奴らがここに来るだろうね~…」
オーロさんが椅子に座る。いつもの落ち着いた様子ではなく、本当にどうしようか悩んでいるようだ。
班長達を追うにしても、場所がわからない。赤丸はもう二つしかなく、本当に近くにいるかどうかを確認するためのもののようだ。
「…一度地球に戻って救援を連れてきますか?」
「少年、それは最悪の手だね~。その案はつまり、仲間を見捨てて逃げ帰ると同意義なんだね~。今ここで何かしないと、二度と三人とは会えないだろうね~」
オーロさんが強い口調で言った。
「水樹さんなら何か…」
作戦を説明していたときも、水樹さんがずっと弄っていた機械を見る。
モニターが大量に点いており、他にも使い方のわからないものが大量にある。
適当に触ってみる。しかし、機械に不慣れなのもありこの状況を打破するような物は見つからない。
「嬢チャンの機械ね~…」
「はい。水樹さんなら何か保険のようなものを残しているかもしれないと思いまして」
オーロさんが機械の前に立つ。
手馴れているのか、器用に手を動かしその保険を探し始める。
数分経った頃、ピタリと手を止めた。
「少年、嬢チャンと気が合うんじゃないのか~い?」
モニターに大きく何かを映すオーロさん。
ヘルメットについた赤丸の機能の高性能バージョンのようだ。
北の真反対。南にしばらく行ったところに赤丸が三つ固まって並んでいた。
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