ep.15「族長」
「キル・テュエマタールだよ。わかるだろう?」
キル・テュエマタールは班長の名前だ。
なぜ探しているのかはわからないが、確実に言えることがある。
こいつは班長に対して明確な殺意を持っている。
「知るわけないだろこのクソ野郎!」
「いい啖呵だ。でも、相手を考えてやろうね」
左足首を掴まれる。
一度空中に持ち上げられ、そのまま地面に叩きつけられる。
それを何度も繰り返される。
地面に叩きつけられるごとに骨が砕ける音が体から聞こえてくる。
右手を動かし襟の辺りのマイクを点ける。
「もう一度聞こうか。キル・テュエマタールはどこだい? 次にくだらないことを言ったら、右手の骨を砕くよ」
地面に転がされる。
右手が足で押さえつけられる。
ミシミシと嫌な音が右手から聞こえてくる。
何も言わなくても骨を砕くつもりなのだろう。
「ぐっ…キル・テュエマタールはここにはいない!」
「嘘だね」
右手の骨が砕ける音がする。
「襟のマイクを点けたのを見逃すかと思ったのか? それに感覚でわかるんだ。強い殺気を放った奴がこっちに近づいてくるのを。君はもう用なしさ」
右手を砕いた足が頭の方に移動してくる。
頭を踏み抜いて殺すのだろう。
走馬灯が頭の中を駆け巡る。
「じゃあね、名も知らない人間」
「そうはさせないんだね~!」
誰かに担がれている。
一瞬のうちに城壁の下から上へと移動している。
たなびく灰色の服に帽子。
「オーロさん…」
「少年、それ以上喋っちゃいけないんだね~」
オーロさんが上着を脱ぎ地面に敷く。
その上にそっと置いてくれた。
「オーロ・カレンシーか。私のことがわかるかな?」
「あいにく、全くわからないね~。でも、そのドクロの首飾りで大体の身分はわかるよ~…。族長自らお出ましとは随分と戦闘員が少ないんだね~、ヒュイド族」
上半身を起こし城壁の下を覗く。
先ほどまでは攻撃をされ続け姿がよくわからなかったが、今ははっきりと見える。
緑色の髪に男らしい顔つき。
赤を基調にした民族的な衣装を身にまとっている。
そして、小さなドクロがいくつも繋がった悪趣味な首飾りをつけている。
「大方、親の敵討ちってところか~い?」
「半分正解、ってとこですかね。だが今回は挨拶をするだけさ。流石にオーロ・カレンシーとキル・テュエマタールの二人を相手にするのはこちらも無事ではすまないからね」
突然、飛んできた剣がヒュイド族の族長とやらを襲う。
「ヒュイド族…。よくも僕のメンバーを傷つけてくれたね」
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