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ep.124「二対の双子」

 大通りの歩道に血の跡を残しながら歩く。

 近場に薬局か病院でもあれば無理やり押し入ったのだが、この辺りにそんな物はない。


「いたのです!」

「いたですなの!」


 キャリキャリと、金属同士が鋭く擦れあう音が頭上から響いてくる。

 咄嗟に後ろに体重をかけて転がり、目の前に着地した小さな双子を見つめた。

 小柄な体格に似合わない二対の鎌を持ち、前髪に色違いの髪飾りがついている以外は相違点が全くない。

 首から街灯の光で輝くブローチをかけ、大切そうに服の中にしまった。


「クライン姉妹……何て間の悪い……!」


「せめて楽に逝かせてあげるのです!」

「あげるですなの!」


 さすが双子と言うべきか、恐ろしいほどのコンビネーションで迫ってくる。

 鎌の刃を引っ掛けながら回転するように動き、地面の小石を巻き上げながら斬りかかって来た。

 両手で鎌の刃を受け止め、思い切り建物に向かって放り投げる。

 轟音を響かせながら窓ガラスを突き破り、蝶番ごと鉄の扉をなぎ倒しながら消えていった。


 襟元の無線機の電源を点け、口に近づけながら話す。


「こちら永宮、こっちに防衛隊が来てるんですが……誰か助けに来てくれませんか?」


『嘘?! あ、こちらパズル。ちょっとこっちも防衛隊の班長クラスにあぶなっ! ごめん、そっちで何とかして!』


 パズルさんの声をかき消すほどの爆発音が響く。向こうも相当大変そうだ。

 無線の電源を切り、剣を鞘に直す。


「いったーいのです!」

「ですなの!」


 さっきは思い切りぶん投げたが、流石に小さい子に剣を振るうつもりはない。

 そう、勝てない相手ではないのだ。それどころか、余裕を持って倒せる相手でもある。


「むー! 剣を持たないなんて舐めてるのです!」

「怒ったですなの!」


 双子が鎌を背中で残像が残るほど素早く回し、手裏剣の様にこちらに飛ばしてきた。

 右手で空中に弾く。


「むむむむむー!」


 青い髪飾りをつけた方の少女が、もう片方の子をバットの様に片手で持ち上げる。

 何のためらいもなく、人間バットをこちらに向かって振り下ろしてきた。


「姉妹! 姉妹だろ?!」


「うるさいのです!」


 流石にガードも反撃もする訳にはいかず、上体を逸らして避ける。バットにされてる方、若干涙目になってるぞ……。

 たまに地面や建物にぶつけられ、ガンゴンと痛々しい音をあげながら振るわれる少女に少しだけ同情を感じながら地面のコンクリートを力任せに引き抜く。

 両腕の力で粉々に粉砕し、砂煙を撒き散らしながら身を隠した。


「どこなのです?! ぶち殺してやるのです!」


「……えーっと、焼けるもんないかな」


 胸の傷を焼いて血を止めたい。流石に失血死は洒落にならない。

 いやしかし、最近の子は本当に恐ろしいな……。


 砂煙の中、足音を消しながら歩いていた瞬間。

 わき腹と左腕に鋭い何かが刺さり、熱湯をかけられたかのような熱さと共に激痛が走る。


「グッ!」


「見つけたのです!」


 砂煙を押しのけながら振り下ろしてくるバットを避け、腕とわき腹に刺さった物を確認する。

 そこに刺さっていたのは、さっき弾いたはずの大鎌だった。

 なぜ戻ってきたかと言うより、新しく出来た傷から流れ出る血の量の方が問題だ。


 少しだけ足がもつれ、体勢が少しだけ崩れる。


「今度は逃がさないのです! 死ね!」


「それただの罵倒――」


 腰の鞘を引き抜き、胸に押し付ける。

 



 肩で大きく息をし、鼓動の速さを元に戻す。


「すぴー……」


「うーん……バット……」


「末恐ろしい……。将来ヤクザになりそうだな」


 地面に双子をそっと降ろし、頬に垂れてしまった血を親指で拭い取る。

 右手には、双子が身につけていたブローチが二つ握られていた。


「首飾りが洗脳道具とか聞いてたけど、防衛隊にもつけられてたとは……。何にせよ、無力化できてよかった。」


 しかし……。

 鼓動を早める技を使ってしまったせいで、出血量が更に多くなってしまった。さすがに視界が白くぼやけ始め、体から力が抜け始める。

 確かこの先に闇市があったはず。あそこなら煙草や麻薬用の火も置いているだろう。


 体に刺さった鎌を引き抜き、その場に突き刺してから歩き出した。

改善点などあればご指摘いただけると嬉しいです。

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