ep.120「一区切り」
「……ヴォランはどうする?」
「うーん。一応裏切り者だからなぁ……」
研究室を出たすぐの広場に戻ってくると、治療を終えたポルトロンさんとパズルさんが、既に事切れて動かないヴォランさんの前で屈んでいた。
「おーいお前達、そろそろ行くぞ」
「あ、そっか。ねえフュジ、ヴォランの遺体はどうする?」
「……一応持って帰ってくれ。埋葬なんかの面倒事は全てワシがする」
「ん。わかった」
パズルさんがゆっくりと立ち上がり、ピースをポケットの中に乱雑に入れた。
視線を天井に移してから、肩を持ち上げるほど大きく息を吸って溜息を吐く。
なんだかんだやってきて、やっと一つの区切りがついた、というところだろうか。
ヒュイド族との戦いから始まって、最後はドラケニクス王星に来て……そういえば、何でドラケニクス王星なんてところと関わりあったんだっけ?
この星と繋がっていた裏切り者、は最終的な決め手みたいなものだし。なんか、もっと最初の頃に……
「ほら坊主、何終わったみたいな顔してんだ。帰るまでが任務だぞ」
「……そうですね。」
ま、どうでもいいか。現にドラケニクス王星での用事は終わったんだ。研究結果も全て潰したし、出来ることはもうない。
大きなあくびと共に体を伸ばし、右手に持った分厚い日記をぷらぷらと揺らしながら歩く。
相変わらず建物の外は犬の死体のせいで悪臭が漂っている。それは、心の底で渦巻く悪寒を表しているようだった。
入るときはこんなに酷くはなかった。腐敗してしまったのだろうか、それにしてもやけに早い。
「帰ったら疲れを取るために焼肉でも食うか」
「今言わないでください……周りの死体のせいで食欲湧かないですよ」
口呼吸で何とかその場を凌ぎ、帰ったら本でも読みながら甘い物でも食べて落ち着きたいな……という淡い考えを胸に抱きながら走った。
足元から伸びる影が、やけに黒く長く伸びていた。
長く続けてきました。次の星で完結いたします。
改善点などあればご指摘いただけると嬉しいです。