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ep.118「薄暗い研究室」

「……こりゃ、すげえな……」


 薄暗い、緑色の培養液のようなものが点在する研究室。明かりを点けるスイッチのようなものは見当たらず、培養液が放つ淡い緑の光だけが光源となっていた。

 山積みになった研究資料を一枚手に取るが、何が書いているかさっぱり理解できない。


「そんなに凄いんですか?」


「ああ。ワシも銃に触れるついでに色々と勉強しているが……この部屋のモノを一つ持って帰るだけで、地球の生物学が三十年は進むだろうな」


 フュジさんが神妙な顔つきで培養液が満ちたガラスの巨大な筒に触れる。その中には、人間の脳と脊椎が入っていた。

 他の培養液が入った筒にも同じような物が入っている。中には、赤い文字で『失敗作』と書かれた物もあった。


「私はこの中に入って寝ていたと言われましたが……なるほど。この様子だと、私が一度死んだというのも本当みたいですね」


 ルマルが顎を触りながら研究室の中を見回し、そう呟いた。

 培養液から視線を外し、近くにあった安っぽい椅子に勢いよく座り込む。研究資料でも作成していたのか、目の前にちょうど使いやすい高さの机が来るようになっていた。

 

 デスクスタンドに吊り下げられていたペンダントを取る。立てに開閉できるギミックが付いている小ぶりの物で、両手で優しく開く。達筆な文字でジュリアと書かれ、その下に色あせた女性の写真が入っていた。

 写真が入った蓋を爪でこじ開け、何回も折りたたまれたボロボロの写真を開く。


 ニッコリと笑った女性と、その人に負けじと幸せそうに笑ったヴォランさんが写っていた。

 裏に小さく書かれた日付は『二○十九年 五月三日』と書かれている。


「えぇ?!」


「どうした、坊主?」


「これ、ヴォランさんと女性が写ってるんですが……日付が五百年以上前ですよ?!」


 今は二五三十年。実に、五百十一年も差がある。

 驚いた様子で駆け寄ってきたフュジさんに写真を渡し、机の上にあった本棚から一冊の分厚い本を抜き取る。

 辞典よりも分厚いその本のタイトルには、達筆な文字で『日記』と書かれていた。


「これ、ヴォランさんの……」


「……日記、か。……あいつを殺したワシに読む資格はあるのか……」


 受け取った写真を丁寧に折りたたみ、躊躇いがちにそう言った。

 

「じゃあ、代わりに俺が説明しますよ。聞きたくなければ、途中で耳を塞いで下さい」


「日記か……私も聞かせてもらってもいいかな?」


 近寄ってきたルマルに見えるように日記を開き、息を吸い込む。


「えっと、一ページ目は――






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