表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/146

ep.117「夢見た研究者」

 カーペットの様に地面に張り付いた黒い犬の死体を蹴り飛ばし、白い建物の扉を開ける。

 中は異様に薄暗く、泡の音がそこら中から響いている。

 三人分の足音が静かな通路に反響する。


「……足跡がありますね。それが階段の下へ続いています」


 地面にあったかすかな土と汚れを手で触り、足跡が続く先を見る。

 薄暗い通路よりも更に暗い、真っ暗な階段が化け物の口の様に大きく開いていた。時折聞こえるかすかな音は、中で戦っている音だろうか。


「じゃ、僕は先に行くね。」


 パズルさんが日本刀を抜き、ゆっくりと階段を下りていく。

 俺も腰に差した剣を右手で引き抜き、口の中に溜まった涎を飲み込んでから下りて行く。

 


「あー……うん、終わったね」


「何でわかるんですか?」


「今、破裂音が聞こえたから。ポルトロンの得意技だろ、心臓を風船みたいに膨らませて壊すやつ。」


 階段を下りている途中でパズルさんがそう言った後、手に持っていた日本刀を鞘の中に直す。

 そういえば、フラムと戦ったときのトドメの技もそんな感じだった。


 しかし、やけに嫌な予感がする。あの二人のことだから負けているはずはないのだが……。

 焦る心の中を代弁するように、足が自然と階段を駆け下り始めた。

 暗闇続きだった階段の先が徐々に明るくなり始め、一気に視界が開ける。



「ワシ、もうダメかも知れんな……見ろよこの手首」


「腱鞘炎になりかかっているだけだろう。さっさと固定しろ」


 階段の先は、白いライトが余すところなく光を届かせる地下広場だった。

 自分の手首を涙ぐみながら痛そうにさするフュジさんと、全身から血を流しているポルトロンさんが居た。

 その中央には、大の字で倒れているヴォランさん。どうやら、嫌な予感は外れていたらしい。あばらが上向きに開いており、流石に生きている気配はしない。


「お疲れ、ポルトロン。」


「大丈夫ですか? フュジさん」


 地面に座り込んでいる彼の元に近づき、ゆっくりと持ち上げる。

 


「ああ、すまないな坊主。……で、ありゃ誰だ? ワシの記憶では、ヒュイド族の族長だった気がするんだが?」


 いつの間にか腰のホルスターから拳銃を抜いていたフュジさんが、ルマルに向かって照準を合わせる。

 人差し指を引き金にかけ、鋭い視線でじっと睨んでいる。

 

「ああ、まあ……。その通りなんですけど、今回は別に殺す必要はないかと思って……。」


「その通りですね。まあ体調が不完全とはいえ、その子に負けましたから。今更何かする気は一切ありません」


「……まあ、そう言うなら大丈夫そうだな。ただ、テュエマタートの奴がなんて言うかな……」


 そうだよなあ。班長、ヒュイド族のこと、すごい敵視してたもんなあ。

 ルマルの方を見て、少しだけ今後のことに頭を悩ませた。最悪、奴隷扱いにでもして何とかごまかそう。

 拳銃をホルスターに収めたフュジさんが服の汚れを払い、ゆっくりとした足取りで歩き始める。


「あれ、どこ行くんですか?」


「そこの族長は、テュエマタートが殺したはずだろ? つまり、ヴォランが生き返らせたってことだ。そんな怪しげな研究結果、野放しにはできなからな」


「ああ、壊しに行くんですか。手伝います」


 ポルトロンさんの方をチラリと横目で見る。

 全身の傷を処置している最中のようで、今は動けそうにない。特にもう危険もないし、パズルさんも居るから大丈夫だろう。

 暇そうに頭をかいているルマルに手招きし、フュジさんと共に歩き出した。

 


 

改善点などあればご指摘いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ