ep.9「夜の街」
「色々あったけど、さっさと行こうね~。ここが開発室、色々作ってるところだよ~」
シンプルな白い扉。
長い廊下の中に一つだけあるこの扉。
「オーロさん、何でこの部屋の近くに全く部屋がないんですか?」
「それはね~…」
扉の向かい側の壁をカリカリと爪でかきだす。
白い壁から、壁紙がペロンとはがれる。
壁紙がはがれた後ろは、ドリルか何かで削ったような跡が大量にあった。
その削った後にピッタリ収まるように、黒い何かがうごめいている。
黒い何かは大きく口を開け、甲高い声で叫びだした。
オーロさんが黒いものを殴りつけてから、壁紙を元に戻す。
「ここら辺一体の壁の中にうじゃうじゃいるんだね~。開発室が逃がした生物が住み着いたのを壁紙で抑えてるんだよ~」
ペタペタと手で壁紙を綺麗に張りなおしている。
「開発室の鍵は持ってないから、中は今度嬢チャンにでも頼んで見るんだね~」
そう言うと、オーロさんは廊下の奥へ歩き出した。
―――――
「少年~。ここからは静かにね~」
オーロさんが腰を低くして忍び足で歩く。
廊下を曲がった先は、大きな窓がいくつもついた渡り廊下だった。
「ここから先は防衛隊の施設だね~。俺らと防衛隊はとても仲が悪いから、この先には行かないのが懸命だね~」
「あの、防衛隊と侵略隊って何で仲が悪いんですか?」
忍び足で進みながら、小声で話す。
「防衛隊が全員宗教信者みたいだからだね~。総帥のことは知ってるか~い?」
「はい、知ってます」
「なら特に説明は不要だね~。総帥を神と信仰するあいつらが気持ち悪すぎて、侵略隊の一人が総帥の顔に落書きした写真をあいつらに送ったんだね~」
「ああ…。それはまずいですよね」
「そうなんだね~。ちなみに送りつけたのはさっき会ったリティっていう奴だから、覚えとくといいよ~。侵略隊全員が気持ち悪がってたから、防衛隊の怒りに合わせて互いに大激突したんだよ~」
そういうことがあったのか。
住んでるアパートの半分が宗教信者だったら、気持ち悪いよな。
その場合気持ち悪いを通り越して怖い気もするけど。
―――――
「特に重要なのはもうないね~。他にもいろいろあるけど、次第にわかっていくと思うよ~」
第三チームの部屋で話す。
「じゃあ俺はギャンブル行って来るから。じゃあね~」
灰色の服から黒いスーツに着替えたオーロさん。
煙草を口に咥えながら部屋から出て行った。
窓の外を見る。
いつのまにか夜になっていたようだ。
窓から見える街の光はとても眩しく、綺麗だ。
暗い部屋の中から窓の外を眺める男の顔を、ぼんやりと照らしていた。
「永宮クン、暗い部屋で何やってるの? 暇なの?」
いつの間にか起きていた水樹さんが部屋の電気を点ける。
「いや、暇なのは暇なんですけど…」
「なら面白いところ行かない?」
水樹さんは悪い顔をして言った。