ep.104「仲間の代わり」
「……ギネブアさんは、どうするんですか?」
水のカーテンの中から這い出し、手首を動かしながら調子を確認する。
リティさん達がいる方向を見ているギネブアさんの方に振り返る。
あぐらをかきながら地面に座り、頭を手でグシャグシャと触り、小さな声で言う。
「……とりあえず、ここに居るよ。リティがあんな程度で死ぬ玉にも思えないし……。後で迎えに行かないと」
わかっているんだ。もし生きているのなら、とっくの前に俺達のことを追いかけて来ていることは。
それでも諦めきれないかのように、道の向こう側をじっと見ている。
「ヴォランを止めることって、できなかったのかな……? リティにも酷いことを言っちゃって……。私、もうどうすればいいかわかんないや」
その言葉に何も返すことができず、視線を下に向ける。
死んでしまったら、もうその人が何を考えていたかなんてわからないんだ。
踵を返し、ギネブアさんと逆の方向に向かって歩く。この方角に歩いていけば、ヴォランさんが居る気がする。いや、確実に居る。
「まぁ、生きて会えるかどうかわからないけど……」
そう呟きながら、右の手のひらにポッカリと空いた穴を覗く。
暗すぎて見ることはできないが、この奥にリティさんの指が埋まっている。取り出すことも出来ないし、あの人の不死身さだ。このままにしておけば、お守り代わりにはなるかもしれない。
「二回もだ。皆の命の代わりに、俺は二回も命を繋ぎとめてしまったんだ」
自分の不甲斐なさに対する悔しさと悲しみが、心をギチギチと締め付ける。
歩幅を徐々に大きくし、後ろめたい感情を振り払うように素早く走り出した。
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