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ep.98「動き出した幕」

「……ああ。全員、落ち着いて聞いてくれ」


 ゼバル隊長が、リビングに侵略隊を集める。

 しかし、全員集まるように命令が下されたのに、何人か集まっていない。


「裏切り者を炙りだそうと思っていたがな……。先手を取られた。ピッグ・ミゴの死体が施設内で発見された」


 その言葉に、かすかなどよめきが広がる。

 死体の写真がホログラフィックによって、空中に移される。全身が黒く変色し、イボのようなものが足先から口の中まで隙間なく体に出ている、むごい死体だ。

 見ているだけで胃の中の液がせり上がって来る感触がする。


「知っての通り、こんなことができるのはヴォラン・ヴェイキュルぐらいしかいない」


 ……ゼバル隊長が悲しそうな表情を浮かべてから、何人かの顔写真をホログラフィックに写す。

 全員、よく見知った顔だ。


「水樹 のりえ、士反 英史、リティ・インモータル、ヴォラン・ヴェイキュル。以上が、裏切り者だったようだ。……まさか複数犯だったとはな」


 隣に立っているプフェーアトさんが、声に鳴らない声を漏らす。

 プフェーアトさんの最近の行動は、水樹さんに明らかに好意を寄せているものだった。そうなるのも当然だろう。


「諸君。……辛いことだが、裏切り者は裏切り者だ。……絶対に、息の根を止めてくるんだ」

「ちょ、ちょっと待ってください」


 ゼバル隊長がホログラフィックを閉じて立ち去ろうとするのを、声をかけて止める。

 周りを見回して、再度いないことを確認してから、ハキハキとした声で言った。


「班長はどこにいるんですか?」

「ああ、そうか。伝え忘れていた。今回の作戦に、テュエマタールは参加しない」


 その言葉に、一気に動揺が広がる。

 眉間にしわを寄せながら、詰め寄りながら問い詰める。


「何でですか?!」

「総帥直々の命令だ。私も反対はしたが、何故か頑なに意見を変えなかったのだ」


 総帥直々と言ったって、命令にも限度があるだろ……!

 侵略隊で一番強いといっても過言ではない班長を参加させないのは、さすがに何かおかしい。しかし、総帥に立場上逆らうこともできない。

 大人しくすごすごと引き下がり、廊下の奥に消えていく隊長を見送った。


「ブル……ヒヒン……」


 プフェーアトさんが呻きながら頭を押さえる。

 俺も今すぐ頭を押さえて叫びたい気分だ。それほどまでに頭の、心の中がグチャグチャになっている。

 仲間を、四人も殺さなければならない。

 

 その現実が、何よりも重く、肩の上に圧し掛かった。

 オーロさんから受け継いだ煙草を一本口に咥えて、火を灯す。


「最善って言ったって……どうすればいいのかわかりませんよ、オーロさん……」


 煙を口から吐きながら、空に向かってそう呟いた。

 

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