ep.97「潜入開発室」
「黒川さん、静かにですよ……そーっと……」
「フハハハハハッ!」
「静かにって言ってるでしょうが!」
黒川さんの口を押さえ、高笑いを止める。
メノンさんが開発室で変なものを作ろうとしているらしいので、夜中に隠れて見物しにきたのだ。
黒川さんが鍵穴に人差し指を当て、鍵を開ける。
「電気は……バレるからいいです。懐中電灯を使いましょう」
懐中電灯のスイッチを入れ、開発室の中を照らす。
メノンさんの机を漁る。
「うーん、特にないですね……ん?」
机の一番下の引き出しから、怪しい書類が出てくる。
ペラリと一枚捲ると、宇宙破壊爆弾などという物騒な文字が真っ先に目が入る。
その他にも侵略隊の金の盗み方やお勧めの酒など、とてもくだらないことが書かれていた。
「くだらないことしか書かれてないですね……」
「我にも見せてくれないか?」
黒川さんが手を出してくるので、束になった書類を渡す。
瞬間、ヒラヒラと一枚の紙が地面に舞い落ちた。
拾い上げ、懐中電灯の明かりを当てる。
「……」
「……我は、神だからこれしきのこと……」
「対抗しなくていいですよ……性癖は人それぞれですからね」
そっと書類の中に写真を戻し、引き出しの中に戻す。
うん。以前どっかで見たことがあるな、あの触手。撮影する趣味はどうかと思うが……うん。
援護しきれない。
「ちょっと他のところでも見ましょうか」
水樹さんの机を漁るが、何も面白いものはない。機械工学を学んでいれば少し面白いものもあったかもしれないが、意味のわからない専用用語だらけの本を面白いとは思えない。
ヴォランさんの机の引き出しを開ける。
一番上の引き出しに、随分と前に開発室に来たときと同じように、一つのペンダントが置かれていた。
「……む。それは何だ?」
黒川さんが背後からペンダントを覗く。
引き出しの中から取り出し、懐中電灯で照らす。
「ペンダントですね。ヴォランさんの私物だとは思うんですけど……」
「む、ジュリア? よくヴォランが呟いている名前ではないか」
ブローチを黒川さんに渡す。
しかし、色あせた女性の写真が入っている以外は特に何もない。
すぐに引き出しの中にペンダントを戻す。
「面白い物はなかったですね」
「おぞましい物はあったがな」
「……それ、絶対にメノンさんに言わないでくださいよ」
開発室の扉に鍵をかけ、逃げるようにその場を後にした。
整いました。
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