ep.8「リビング」
「よく使うところから紹介しようかね~」
そう言ったオーロさんの後ろには、テレビに大きなテーブル、ソファーが置かれた空間が広がっている。
「ここが第一、第二、第三全員が使える部屋だね~。みんなはリビングって読んでるよ~」
そう言ったオーロさんはリビングにある暖炉の方に目を向ける。が、すぐに目を逸らした。
暖炉の方を覗いてみる。
直径一メートルほどはある肉団子のようなものが転がっていた。
おまけに表面が焼かれ、地味に動いている。
「オーロさん、何ですかあれ」
「気にしちゃ負けだね~。さ、次―」
オーロさんの言葉が何者かの声に遮られる。
「ちょっと待てオーロ! 新人君が来るっていうからずっとここでこうして待ってたんだぞ?! それを無視するのはどうなんだ!」
肉団子から手が飛び出す。
次に足が飛び出し、肉団子の形をしていたものはどんどんと人の形に変形していく。
「お前と話すのが嫌だったんだね~…」
オーロさんの言葉から少し元気が消える。
「新人君! たしか永宮と言ったね! 私の名前はリティ・インモータルだ!」
金髪に青い目、中世的な顔つきをしている。美形でよくモテそうだ。
なんだか凄く元気がある人だ。とても悪い人には見えないが、オーロさんが警戒している。
「おっと! 入隊のプレゼントを用意していなかったな! こいつは失敬、私の頭でもどうかな?」
そう言うと、自分の頭を何のためらいもなく捻り切った。
目が開いたままの頭が地面に音を立てて転がる。
首からは血が噴き出し、リビングに敷かれている絨毯がどんどん紅色に染まる。
やがて立っていた体も、崩れるように地面に倒れた。
「うわあああっ!?」
足元に転がった頭を避けるように後ずさる。
肩をオーロさんに叩かれる。
オーロさんは、そのまま頭を蹴った。
「何してるんですかオーロさん?!」
「大丈夫大丈夫~。こいつはね~、死なないんだよ~」
オーロさんの言葉に反応したかのように、体が立ち上がる。
地面に転がった頭を首につけ、血まみれの顔のままニコッと笑った。
「私の頭は気に入らなかったか…。よし、ならば次は右腕を―」
「いい加減にしろアホ!」
後ろから怒声と共に拳が飛んでくる。
殴られたリティ、という死なない人は暖炉のほうへ飛んでいった。
頭を火に突っ込む形で、なんとも情けないポーズをしている。
「オーロ、それに新人君。ごめんね、うちの奴が」
謝る仕草をしながら頭を下げる人。
「永宮クンだっけか。私の名前はウォト・ネギブア。あのアホと同じ第二チームのメンバーさ」
頭を上げるネギブアさん。
赤い髪をポニーテールにして纏めている。
美しい女性で、こちらもよくモテそうだ。
「おいコラ、リティ! とっととこの絨毯掃除するぞ!」
暖炉から頭を抜き取ったリティさんは、髪の毛がチリチリと燃えている。
「行こうか少年~」
オーロさんが歩き出した後に続く。
後ろからはリティさんとネギブアさんが大声で話しているのが聞こえてくる。
「私の血で絨毯を真っ赤に染めたほうが早いぞ!」
「そんなことしていいわけないだろアホ!」
ネギブアさんの怒声と共に、また暖炉に突っ込んだ音が響いた。