果物屋のおっさんは実は!?
ああ、今日も空は青いな...
リンゴを売っている果物屋のおっさんも痺れを切らしたのかチンピラまで雇って俺を捕まえに来たらしい。牢獄の番人っていい人かなっ、ははっ。
正直、リンゴや他の果物も美味いしこれまでの攻防から仕方なく見逃してくれる良いカモだと思っていたのだが人は変わってしまうようだ。
今俺が腫れた顔をさすりながら寝ている街はルーナリアだ。商業都市や大都など何か特別な名前があるわけではなく、ただ人が多いというだけの街で中継地点とよくされている。ここから村や王都、商業都市に行く人など様々だ。
「ガハハッ今日も来たのか坊主!今日こそは逃がさないから覚悟しろヤ!」
「おっさん、見つけるの早すぎだぞ。」
見つかったのはいつも通りリンゴを盗もうとしたそんなときだ。恨みを晴らすというよりも俺から逃げれるかと挑戦的な態度の方が強かった。
俺の職業は盗賊だ。自分の気配を薄くして人の中に紛れることや盗むこと、凡人よりかは少し素早いなどの特徴がある。ましてや太陽が一番高くにある時間で鐘の音が鳴ったばかりだ。人が一番多い時間なのに俺を見つけたあたり実は凄腕の冒険者なんじゃないかと俺は思っている。
「あいつのことかガランのおっさんが言ってたのは!」
「ああそうだっ追いかけっこでもして懲らしめてきてくれっ」
「おっしゃー、気合入れていくぞ」
そんなことを考えていると店の奥から3人のチンピラが出てきて余裕がなくなった俺はすぐに逃げ出した。どうやらさっきの言葉が合図だったようだ。随分と楽しそうでありガラは悪いのだが実際に悪い連中ではなさそうな気がする。ただ、自分がピンチなことには変わりはない。
力の入れ方を考えて各部位を最大効率で動かして自分の瞬発力を存分に発揮させる。周りの人々をかき分けていき走り続けるがそれでは注目を集めてしまい結果としてどこに逃げたのか分かってしまう。度々振り返ってみるがまだ自分のことを捕捉しているようだ。
「あいつ、かなり素早いなっガランのおっさんも目をつけるはずだぜ。」
「ああっ、新しい有力株って感じだな。」
「これは楽しみだぜっ」
少し耳を澄ましてみると有力株などと意味の分からないことを言っている。徐々に距離をと取れているし、言葉が詰まっていることから余裕はあまりないのかもしれない。十分に距離を取ったところでおれは路地裏に入った。逃げ場としては定番の場所だ。それと同時に治安は悪く、行き止まりも多いので街の構造を知っていないと寧ろ逆効果になる。
俺がこの路地裏に入ったのにも理由がある。何故か不自然にも他の道が雑貨屋や占い師がいたりなどして道が塞がれていたのだ。
「よしっ逃げ切ったな!明日からはまたいいカモ探しだな。」
「リンゴの一つくらい盗んでから逃げ切りたかったぜ。もうおっさんずアップルともおさらばだ。」
不安は残るものの逃げきれたことに安堵し、俺は伸びをし路地裏を進んだ。少し気を緩め過ぎてしまったのだろう。それと同時に強い衝撃を受けた。気が付けば俺よりも遙かにでかい影が下にあり見上げてみれば、二カッっと笑うガランと呼ばれていたおっさんが仁王立ちで立っていた。
あっ俺死んだわ...
「ガハハッ、よう坊主っ手間かけさせやがって覚悟はできてんだろうなぁ。!」
「随分とナメタ真似してくれやがってタダじゃすまさないからな、オラァ」
「おっお店の方はだっ大丈夫でしょうかぁ...戻った方がいいんっ...ぶおあらぁぁ」
ガランのおっさんに顔面をぶん殴られた俺は空中で人生初の2回転半をさせられ地面とファーストキスをした俺はなんとか痛みの軽い方の腕を使い起き上がってみる。
「合格だっ!オマエ冒険者になってみねぇか?」
普通なら今頃は青空を見ながら冒頭にあげたような感想を抱いているはずだ。なのにおっさんはなんといった!?冒険者!それから意識を手放すのにはあまり時間がかからなかった。