幸子ちゃんの夢の怖い話
「ねえねえ、幸子ちゃんの夢の怖い話しってる?」
夏休みを一ヶ月後に控えたある日、和也くんと太くん、由美ちゃんは怪談話をしていた。
「しってる!あれでしょ、バナナを用意しないと足を切られちゃうやつ!」
と、由美ちゃん。
「ええー、それ怖い。あたしの話はねー、この話を聞いちゃうとー、幸子ちゃんの世界に連れていかれちゃうってやつだよー」
なーんだと、由美ちゃん。
ふん、と鼻をならし、太くん。
「怖くねーよ。幸子の世界にいったって、現実世界とかわんねーよ!」
「あれー、太くんは怖くないんだ?強いねー」
「でも、たしかにそうかも。幸子ちゃんの世界でも学校にかようんだよね?」
太くんの言葉に、由美ちゃんもほっとした表情をしている。
ただ、和也くんだけが違和感を感じていたけど、弱虫とバカにされると思い、黙って聞いていた。
次の日。
太くんが学校を休んだ。
「太くん、幸子ちゃんの世界につれていかれちゃったのかなあ」
今にも泣き出しそうな、由美ちゃん。
「さあ?でも太くん強いから、また元気に通ってくると、あたしはしんじてるよー」
その話に、少し勇気付けられた由美ちゃんとは対照的に、和也くんは疑いの目を向ける。
「どうしたの?和也くんは、怖い?この話」
「べ、別に怖くねーし!」
和也くんは二人の前から立ち去る。
その間も、由美ちゃんは
「ねえねえ、ほんとに大丈夫かな?」
と詰め寄っていた。
また次の日。
太くんに続いて、由美ちゃんも学校を休んだ。
流石にたまらないと、和也くんは詰め寄る。
「おい!二人とも休んでるぞ、どうすんだよ!」
「うーん、幸子ちゃんの夢の怖い話をしたのはあたしだから謝るけどー」
「それじゃあ!どうすれば助かるのか、教えろ!」
「ちょっとー、痛いって。そうね、幸子ちゃんの世界から出てくるにはー、今自分が幸子ちゃんの世界にいるってきづかないといけないんだー」
「それじゃあ!叩き起こしてくるよ、太と由美を!」
駆け出す和也くんの後ろから、くすくすと笑い声が聞こえる。
「でも、幸子ちゃんってすごーくおこりっぽいからー、気を付けてね、和也くん」
そんな言葉は御構い無しに、和也くんは走り出した。
向かうは、太くんと由美ちゃんの家。
「太、由美、今助けに行ってやるからなー!」
学校から抜け出すのには勇気が行ったが、誰にも邪魔されずに太くんの元に辿り着いた。
太くんは布団に入って、眠っていた。
和也くんは力一杯、その体を揺さぶる。
「おい!太!起きろ!起きてくれよ!」
幸子ちゃんの世界に閉じ込められているであろう、太くんを連れ戻すべく、必死だった。
その甲斐あってか。
「う、うーん……」
「太!」
太くんが、気付いた。
「か、和也?」
「太ーっ!」
和也くんは太くんに、抱き着いた。
わからないでいる、太くんであったが。
「お、おまえ……」
「なんで、ここに……」
和也くんの言葉によって、状況を、飲み込んだ。
「あいつがいってた!目覚めれば、元の世界に戻れるって!」
「あいつ……」
和也くんは、必死に伝える。
太くんを元の世界に連れ帰る為に。
「それで、お前はどうした?」
「だから!学校から走って、太んちに来たんだろーが、わかんねーやつだな!」
和也くんが必死に経緯を伝えると、太くんは両手で顔を覆った。
「なにして、くれてんだよ……」
「ええ!?」
体を震わせる太くん。
「そいつは元の世界にはいないんだよ!俺と由美は帰ったんだ!元の世界に!」
そうだ。
和也くんは気付いた。
あの日、太くんと由美ちゃんと三人で、この幸子ちゃんの夢の怖い話をして。
三人とも、幸子ちゃんの世界に連れて行かれた。
つまり、
あいつが、
幸子。
ここは、幸子ちゃんの世界。
そう、和也くんは知らず知らずに、太くんを再び幸子ちゃんの世界に連れて来てしまったのです。
落胆する太くんを落ち付けようと、和也くんはあの子、幸子ちゃんに言われた事を思い出した。
「だ、大丈夫だ!あいつは自分が幸子ちゃんの世界にいるってきづけば、でられるっていってた!まだでられる!」
しかし、それは太くんも知っている事。
そして、太くんはその続きも知っている。
「お前は、知らないんだよ……元の世界にまだ帰ってねえから」
「元の世界に帰る時、聞こえたんだ……」
「
次
に
来
た
ら
絶
対
に
逃
が
さ
な
い
」




