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ちょっと変わった昔話  作者: 相原千年
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三匹のブタ

デパートや橋も、こうして崩壊したのでしょうね。

■三匹のブタ

 ある村に、三匹のブタがいました。ある日、お母さんブタが、

「そろそろ、お前たちも独り立ちするときです。この家を出て自分たちで生きていきなさい」

 と言いました。そこで三匹のブタは、村はずれでそれぞれひとり暮らしをすることにしました。まずやらなければならないのは、家づくりです。

 一匹目のブタはワラで家をつくりました。でも、束ねたワラを重ねただけの家だったので、オオカミに「ふうっ!」とひと息で吹き飛ばされて食べられてしまいました。

 二匹目のブタは木で家をつくりました。でも、木を簡単に組んだだけの家だったので、オオカミに「ふうっ!」とひと息で吹き飛ばされて食べられてしまいました。

 三匹目のブタは、レンガで家をつくりました。丈夫なレンガを積み上げてつくったので、オオカミが息を吹きかけても体当たりをしても、びくともしません。そして、とうとうオオカミはあきらめて帰っていきました。


 三匹目のブタの家がオオカミに壊されなかったという話は、またたく間に村中に広まりました。そして、三匹目のブタは、「私の家もつくってほしい」と、村中のブタにお願いされました。こうして、ブタは大工として独り立ちすることができたのです。

 お願いされたレンガの家をつくると、とても喜ばれました。でも、お金はあまりもうかりません。家をつくるときに使う丈夫なレンガはとても高価だったからです。

 そこで、大工のブタはレンガを少し安くてあまり丈夫ではないものに変えました。でも、出来上がった家の見た目は、丈夫なレンガを使ったときとほとんど変わりません。家をつくってほしいとお願いしてきたブタも、レンガの質が下がっていることにまったく気がつきません。そして、大工のブタのもとには、レンガを安くした分だけたくさんのお金が残りました。

 それ以来、大工のブタは家をつくるときのレンガの質をどんどん下げていったのです。


 大工のブタはどんどんお金をもうけるようになりました。家づくりも、弟子のブタを雇ってたくさんの家をつくれるようにしました。こうしてさらにお金をもうけた大工のブタは、半年後には村一番の大金持ちになっていたのです。

 ところが……。

 そのころから、大工のブタのつくった家がオオカミの体当たりで壊され、住んでいたブタたちが食べられてしまうという出来事が、いくつも起きるようになっていました。それもそのはず。このころのブタが使っていたレンガは、ただ粘土を少し固めただけのような、ひどいものになっていたのです。

 村のブタたちは、大工のブタのところに押しかけて、「どういうことだ!」と文句を言いました。すると大工のブタは、

「あれは、扉のカギを閉めていなかったから、扉からオオカミに入られて、内側から壁を壊されたのだ。カギを閉め忘れていたことが悪いのであって、私のつくった家が悪いわけではない」

とウソをついて言い逃れをしました。

 大工のブタの言葉に納得できない村のブタたちは、次の日も押しかけました。すると、大工のブタの家の前には大きなイボイノシシがいて、村のブタたちを追い払ってしまったのです。イボイノシシは、大工のブタがお金で雇った用心棒でした。


 イボイノシシが村のブタたちを追い払うところを見ていた弟子のブタは、大工のブタにたずねました。

「オオカミが内側から壁を壊したというのは、本当なのですか?」

するとブタは、

「そんなこと知るもんか。でも、壊された家に住んでいたブタたちは、もうオオカミに食われてしまったからな。何とでも言い逃れはできるさ」

と答えました。

 それを聞いた弟子のブタが、

「じゃあ、本当はオオカミが外側から家を壊したのかもしれないんですね。前から、こんな弱いレンガじゃオオカミは防げないんじゃないかと思っていたんです」

と言うと、大工のブタは、

「たぶん防げないだろうなぁ。でも、それが私に何の関係があるんだ? その家に住むのは私じゃないんだ。他のブタが住む家のことなんか、いちいち気にしてなんかいられるか! 大事なのは自分だけだ」

と吐き捨てるように言ったのです。

 弟子のブタは、この言葉をしっかりと胸に刻みました。


 それから数日後、ブタは丈夫で高価なレンガをたくさん買ってきました。弟子のブタが

「このレンガはどうしたのですか?」

とたずねると、大工のブタは

「今の家は少し狭くなってきたからな。新しく大きな家をつくろうと思って買ってきたんだ。お前、さっそく家をつくれ」

と弟子のブタに命令しました。

 弟子のブタが言われたとおりに大きな家をつくると、大工のブタは満足そうに新しい家に引っ越しました。ところが、その日の夜……。

「ドン! ガラガラッ」という大きな音で大工のブタは目を覚ましました。

「な、何だ!? 何が起きたんだ?」

と飛び起きた大工のブタの目の前には、体当たりで家の壁を壊したオオカミがいました。

「なぜ、こんなに簡単に壁が壊れたんだ!?」

と叫ぶと同時にオオカミに襲いかかられ、大工のブタは食べられてしまいました。

 オオカミは、そのまま近くにあった弟子の家にも体当たりをしました。でも、弟子の家はびくともしません。やがて疲れ果てたオオカミは、あきらめて帰っていきました。

 次の日の朝、壁に大きな穴が開いたブタの家を見た弟子のブタは、

「確かに、大工のブタの言ったとおりだった。他のブタが住む家のことなんか考えても仕方がない。大事なのは自分だけなんだ」

とつぶやきました。

 弟子のブタは、大工のブタが買ってきた高価で丈夫なレンガを自分の家に使い、大工のブタの新しい家には、村のブタの家をつくるときに使っていた、安くて質の低いレンガを使ったのです。


 弟子のブタの家がオオカミに壊されなかったという話は、またたく間に村中のブタに広まりました。そして、今度は弟子のブタが、「私の家もつくってほしい」と、村中のブタにお願いされ、弟子のブタは大金持ちになりました。

 やがて、弟子のブタも自分の弟子を雇うようになり、大工のブタに教えられたとおり、「大事なのは自分だけだ」と教えました。この教えは、弟子の弟子、さらにその弟子にも受け継がれていきました。そして、村はすぐに壊れる家ばかりになり、次々とオオカミに襲われて、ついに村のブタは絶滅してしまったのでした。

 めでたし。めでたし。


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