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桃色の瞳の少年  作者: 芥屋
第一章
4/18

環の日常3

「きゅうこ様~。失礼しますよ~」

 小さくノックをして部屋に入る。普段なら返事がない限り勝手に入りはしませんが、朝という事もあり今回は気にしません。出来ればきゅうこ様もノック無しに僕の部屋に入るのは止めて欲しいのですが、あの楽しそうな顔を見ると何も言えません。

 ガチャリと静かに音を立てて開かれたドアをくぐれば、そこは私にとっては未知の領域です。

 きゅうこ様の部屋はとても所有物を溜め込んでいる為物で溢れています。真ん中に大きなベッド、収納幅の広い本棚、大きなディスプレイのパソコンの三つを主軸として床にはきゅうこ様の着替えや書物、他にはぬいぐるみやゴミが纏められた小さなナイロン袋が転がっていて足場が無い。

 小さなテーブルの上には手持ち用のパソコンとプリンターを始めそれで印刷されたであろう書類が山積みに置かれている。大きなディスプレイのパソコンの周りには丸いディスクが何十枚も裸でばら撒く様に散らばっていて滅茶苦茶です。

 本棚にはジャンルを問わず様々な書物が置かれています。辞書や実用書、エッセイや外国語で書かれたタイトルの本があれば漫画や小説なども巻数不問で並べられている。だけどこれだけ大きな本棚にびっしりと書物があるのにまだ床に何冊か散らばっているのを見るとどれだけきゅうこ様が読書を好きなのか分かります。

 これだけ物が溢れているのにまだ押入れの中にはきゅうこ様の秘蔵物があるらしいです。見ないでほしいと言われたので見た事はないですがきっと大事な物だと思うので僕が勝手に触る事はありません。

 今も足場が無く部屋を見渡すばかりなのですが、これはこれできゅうこ様の意図があり置かれているのかもしれないので勝手に動かしたりはしません。以前も一度くれはが善意でこの部屋を掃除した事があるのですが『勝手に人の部屋いじらいでよ! 何処に何があるか分からなくなるじゃない!』ときゅうこ様が怒っていたのを覚えています。

 ただそれを聞いたくれはの反応はとても冷やかで溜め息混じりに『環様はあぁなってはいけませんよ。あれは収集癖ではなくただの駄目な人です』と言っていた事の方が印象的でした。

 何とも女性らしくない部屋ですが、きっときゅうこ様にはこれが過ごしやすい部屋なのでしょう。

 落ちている物を踏まないよう気を付けながら部屋の中に足を進める。服や本、お菓子の袋など踏めば転びかねないので慎重に歩みを進め、一人分の潜む膨らみがあるベッドに向かう。

「きゅうこ様~。朝ですよ~」

 足場を気にしながら声をかけるが膨らみは反応を見せない。一度くれはが来ているので眠っては居ない筈なのですが、もしかしたら二度寝をしてしまっているのでしょうか?

「きゅうこ様~。一緒に朝ごはん食べましょう~。美味しい朝ごはんですよ~」

 ベッドまで辿り着ききゅうこ様が潜んでいるであろう膨らみを揺する。上品な手触りの掛布団を撫でる様に揺さぶり振動を与えるが何も反応が無い。ただ僕の手が与える振動に逆らう事なく身を任せている。どうやらこれは本当に二度寝かもしれません。

「うぅ、起きてくれないと僕が朝ごはん食べちゃいますよ~。ちょっとお腹空いてますのでペロッと食べちゃいますよ~」

 僕に出せる最大の脅迫にも反応が無いので、これは本当に寝ていると判断します。少し揺らす振動を強くしますが変わりはなく起きる気配はありません。こういう時のセオリーは頬をペチペチと叩くか耳元で大きな音を立てる行為ですが、それをするにはこの掛布団をめくる必要があります。だけどそれを眠っている女性にするのはマナー違反で失礼にあたる行為ですので手が止まります。

「………ぁあ仕方ない、きゅうこ様~。失礼しますね」

 揺さぶっても反応がないので意を決して掛布団をめくる事にしました。きゅうこ様が後でお怒りになるかもしれませんがこれ以上くれはを待たせる訳にもいかないので掛布団に手をかけます。

 一応枕側に手をかけますが寝相が悪くてこっちに下半身が無い事を祈り、音を立てないようにこっそりと捲る。

 掛布団を捲り露わになった箇所を覗き込むと、きゅうこ様の青に輝く綺麗な黒髪が見えてきた。

 そこで少し安堵し声をかけようとした瞬間、


「ばぁぁああ!! 環つ~か~まえ~た!!」



 先に伸びてきた二本の細い腕に掴まれ物凄い力で掛布団の中に引きこまれた。

 何が起こったのか分からず混乱して声が出ない僕を気にもせず二本の腕は僕の腰と頭に巻きつき指を食い込ませて噛みついてきた。少し爪が深く食い込み痛みが走るが二本の腕は気にもせずそのまま内側に僕を引き寄せる。

 すると柔らかく暖かいクッションのようなものに僕の頭が当たりそのままもう一本下半身に腕が巻きついたかと思うと体全体が暖かいものに当たりがっちりとロックされた。

 完全に体は掛布団の中に入ってしまい視界はクッションに塞がれ暗闇に包まれている。体は動かなく八方塞がりの状態になってしまい呼吸も困難になって来た為、頭を振りもがきクッションから脱出を試みる。

 頭を押さえる腕もただ引き寄せる力しか出していない為顔をクッションから出す事は容易だった。

 ぷはっと息を出しクッションから顔を出すと少しずれた眼鏡から僅かな光が入り込み視界が露わになる。

 その時視界に入ったのは、悪戯が成功して喜んでいる子供の顔だった。正確にはそんな子供の様な顔をしたきゅうこ様なのですが。

「えへへぇ~。おはよう環ぃ」

 きゅうこ様は僕の顔を眺めながら嬉しそうに猫撫で声で挨拶をしてくれました。えぇ、混乱しながらも実はそれなりに気付いていました。きゅうこ様によって僕の体は掛布団の中に引きこまれてしまい、下半身に巻きついた腕はきゅうこ様の脚でクッションだと思っていたものはきゅうこ様の服越しの乳房だという事は。

 きゅうこ様は僕よりも背丈が大きいのでこうして僕を抱き締める形になると僕の体はすっぽりと収まってしまいます。ネックブラウスに身を包んだその体はとても柔らかく抱き締められた僕は否応無しに女性らしさを意識させられ動揺しますが、出来るだけそれを顔に出さないよう努めきゅうこ様と向かい合う。

「お、おはようございますきゅうこ様。今日もご機嫌そうでな、何よりです」

「まぁねぇ~。朝から可愛い環の照れた顔見たら上機嫌にもなるわよ。その困り顔がたまんないわぁ~♪」

 きゅうこ様は心から上機嫌そうに顔を緩ませ僕の顔を再び胸元に引き寄せ頭をワシャワシャと撫で回します。再び柔らかな暗闇が視界を覆い呼吸が苦しくなり僕はもがく様に顔を左右に振りますが、きゅうこ様はそれを見て更に胸元に顔を埋める力を強くします。

「ん~良い匂い、シャンプー新しいのに変えたのね。髪もサラサラだし前よりも素敵よ」

「ムギュギュ……ぁ、ありがとうございます。くれはが通販で買ってくれたのでそれを」

「成程ねぇ、流石に呉葉は環の事を良く分かってるわ。これは前よりも良い抱き心地ね!」

 力説しながらきゅうこ様は自分の鼻を僕の髪に擦り付けるように埋め大きく匂いを吸い込んでいます。とても楽しそうですが僕としては恥ずかしい限りでそろそろ呼吸も辛くなってきました。

「ムギュギュ……あの、朝食の用意が出来てますのでそろそろ、」

「朝食?」

「はぃ、朝食です。くれはが美味しい卵を買ってますよ」

 谷間から顔を出してきゅうこ様をなだめるように諭しかける。

「………環はもう済ましたの?」

「ぇ……はぃ、頂きました」

「いっぱい食べたの?」

「いっぱい食べました」

「一人で?」

「くれはと二人です」

「卵美味しかった?」

「卵美味しかったです」

 今までご機嫌だったその表情は朝食尋問と共に沈んでいき綺麗な頬はぷっくりと丸く膨らみ、見るからに不機嫌な表情に変わってしまった。

「えぇぇええ?! 一緒にご飯食べないの?!」

「す、すみません……でも、その、が、学校に行かないと駄目なので時間が、」

「学校遅刻しましょう!」

「だ、駄目ですょ! それにもうそんなに時間がありませんし……」

 僕の言葉にきゅうこ様は顔を上げ時計を見る。僕も確認しようと思い体をくねらせ脱出を試みるがそれはきゅうこ様が許してくれず抱き締める腕の力が増してしまいました。

 このマンションできゅうこ様と暮らし始め、僕の中できゅうこ様という人物の認識が少し変わりました。最初の頃は物静かで清楚な方だと思っていたのですが、同棲を始めた最初の頃にその人物像は崩れ去りました。

 出会った頃は……

『ごきげんよう環さん。今日も一段と綺麗な髪ですね。良ければ少し、触ってもいいかしら?』

 といった感じの雰囲気を纏っていたのに、今となっては……

『おはよう環ぃ。ん~~綺麗な髪の毛、ちょっと食べてもいい?』

 上機嫌な時はこんな感じになってしまう。かつてのきゅうこ様からは想像もできない程とろけたというか、だらけたというか、こっちが動揺してしまう程人が変わってしまった。

 くれはは、『あれがきっと本性なのでしょう。気持ち悪いと感じたら私に申してください、抑えますから』と言って気にしていなかった様です。そういう態度や言動の変化よりも生活面での自堕落具合の方が心配だと嘆いていましたが。

 ただきゅうこ様はやっぱりきゅうこ様で、私やくれはの事をとても想ってくれる優しい方なので別段僕の中で何かが変わったという事はありません。むしろ今の様子の方が活力があるというか楽しそうですし、本性を見せてくれたという事が僕の中で少し嬉しかったです。心を開いてくれた、僕はそう解釈しています。

 そんな事を考えていると少し微笑ましい気持ちになってしまい、頬が緩んでしまいます。

 対照的にきゅうこ様は恨めしい目で時計を睨み溜め息を吐き出し膨らんだ頬を元に戻しました。表情は未だに不機嫌さを滲ませていますがいつものきゅうこ様の顔に戻りつつあります。

「う~ちょっとふざけ過ぎましたね。せっかく朝からハグできたのに一人で朝食を食べる羽目になるとは……」

「すみません……でも、登校時間はちゃんと守らないと…」

「分かってるわ。環は学校が好きですものね」

「はい……あの、でもきゅうこ様と一緒に居る時間も大切です」

「ありがとう…私も環とこうして一緒に居るのがとても楽しくて大切よ」

 そう言ってきゅうこ様は僕の頭を優しく撫で口づけをするかのように僕の髪に顔を埋めた。それはとても優しさが伝わるスキンシップできゅうこ様の言葉が嘘ではない事を証明してくれる。

 先まで動揺からざわついてた心は穏やかになり気付けばきゅうこ様の胸の中から抜け出そうという気力は無くなっていた。

「環、学校は楽しい?」

「はぃ。同じクラスの人達も先生方もとても優しくて、本当に楽しいです。くれはが少し馴染めていないみたいで、それだけが気がかりですが……」

「大丈夫よ。呉葉にも聞いたけど、あの子はあの子で学校が楽しいって言ってるわよ」

「それなら、良いのですが……」

 僕の気持ちを汲んでくれたのか、頭を撫でるきゅうこ様の手つきが更に優しくなり僕の沈みそうな気持ちを宥めてくれる。その感触がとても心地良く少し目がとろけてしまい、眠気にも似た微睡みが浮かんできます。

「きゅうこ様、あの、そろそろ……」

「ん~あと五分だけ。もうちょっとだけこうさせて」

 そう告げてきゅうこ様は再び巻きつけた腕の力を強くし、僕の体を強く抱き締める。まるで逃がさないとでも言うかの様にがっちりと固めているのにきゅうこ様の体はとても柔らかく抱き締められていると脳がクラクラと酔ってしまいます。

 ベッドの中という安堵してしまう空間も作用し余計に僕の意識を奪うのですが、何とか負けないように気をしっかりと保ちます。でも……

「ほら、ちゃんと時間になったら起こしてあげるから……」

 僕の努力を打ち消すかの如くきゅうこ様は僕の頭をあやす様に撫でる。それは子供を寝付かせる手段の一つで僕にはそれは有効らしく、眠気が加速してきました。

「ちょっとだけ、ちょっと一緒に眠るだけだから……」

 きゅうこ様も幸せそうな顔をしています。目を細め唇の両端を吊り上らせたその笑顔は何とも楽しそうで安心してしまいます。……いや、あれは笑顔なのでしょうか? 眠気のせいで頭が上手く働きません。

「ほら、お休みなさい……」

 あの顔は、確か……したり顔という表情では……


「駄目ですよ九子様。時間なので起きてください」


 意識が途切れそうになった瞬間掛布団が派手に吹き飛び眩しい人工の光が視界に飛び込んできました。

 突然の光に驚き咄嗟にきゅうこ様の胸元に自ら顔を埋めてしまいます。その自らの行動にまた驚き、又も咄嗟に身を後ろに逸らします。するときゅうこ様も実は驚いていたようで抱き締めていた手の力は緩んでいて簡単に引き剥がせました。

「環様も簡単に流されてはいけませんよ」

 体が自由になった途端今度は両脇を何かに掴まれ、物凄い力で引き寄せられた。何が起こっているのが全く理解出来ませんが、体が宙に浮いた事だけは分かります。

 そのまま強制的に立ち上がらせましたが、眠気がまだ体を支配していて上手く立てず足元がふらつきますが僕を持ち上げた二本の腕が支えてくれたので膝を着く事はなかった。

 眠気で虚ろな目で支えてくれた手の持ち主を見ると、そこに居たのは眉間にシワを寄せたくれはだった。

「く、くれは?! ぁ、ぁあの、あわわ?!」

 心の底から驚き身を後ろに引きますが、足元に転がっていたきゅうこ様の着替えに足を滑らせ転びそうになりました。くれははそれを素早く察知し僕の肩に手を伸ばし支えてくれます。

「落ち着いてください環様、あぁ、こんなにも乱れてて」

 くれはは立ち上がった僕の服装を綺麗に正してくれるとそのまま髪や眼鏡まで細かく整えてくれる。その顔には少し苛立ちらしき不快の表情が見える。

「く、くれはごめんね。自分でするから、」

「環様」

「ぁ、はぃ」

 整い終えたくれはは姿勢を僕と同じ目線の高さまで低くし目をしっかりと僕に合わせる。

「あまり九子様を甘やかすのはお止め下さい。この方は人よりも怠ける傾向にある方なのですから厳しく接しないと為になりません」

 諭すように、だけど少し優しさを滲ませたくれはの言葉はとても失礼な事を言っているような気がします。

「チッ……もう来たんだ呉葉」

 のそりと上半身を起こしたきゅうこ様は眠たそうに目元を擦りながら大きな欠伸をする。それを見たくれはは溜め息をつききゅうこ様に話しかける。

「二回目ですがおはようごさいます九子様。環様を可愛がるのはかまいませんが度が過ぎるのは遠慮下さいと何度もお伝えしましたが覚えていますか?」

「だって二人が学校に行っている間私一人だけなのよ? ちょっとつまみ食いしてもいいじゃない~」

「つまみ食いは断固禁止です。本当に……いいですか九子様?環様は……」

 小さく欠伸をして落ち着いた僕を余所にくれはときゅうこ様は言い争いを始めてしまいました。

 この二人はよくこうして僕の事で口論を繰り返しています。話題の渦中である僕からすれば心中不安になる一方なのですが、不思議とそれ程仲が悪くは見えないので深く問題とは思っていません。二人もただ意見が食い違って話し合っているだけで互いの事は快く思っていると言っている。

 少しズボラな所があるきゅうこ様と几帳面なくれはだから、やっぱりこういう衝突は必然なのかもしれません。

 たまにヒートアップして危険な時はありますが、止めて下さいと言えば素直に止めてくれる二人はやっぱりとても優しいと思います。

 改めて時間を確認するときゅうこ様を起こすのに時間をに十分も使っていました。くれはが少し不機嫌なのも納得ですね……後で謝ります。

「もう! とにかく、もう登校しないと間に合いませんので私達は出かけます。九子様は朝食を食べてこの部屋の掃除を絶対にして下さい。これ以上汚い部屋にするなら環様はこの部屋に侵入禁止にします」

「ちょっと勝手に決めないでよ! それに何度も言ってるけど汚くはありません! 環だってそう思うでしょ?!」

「ぇ、ぇえ?! えっと、足場が無いのは危ないですがこれはこれできゅうこ様の部屋らしいかと、」

「環様も真剣にお答えせずともいいのです。それに今のはフォローになっていません」

「あぅ……」

 咄嗟に話を振られた割に良い答えを返せたと思ったのですが、くれはの評価は厳しいです……

「行きましょう環様、本当に時間が迫ってます故、今日は車で向かいますよ」

 僕の手首を掴み、急かす様にくれはがドアに向かいます。その際足元に置いている物を足でどかしながら進んでいるのを見ると僕の侵入時の気遣いが虚しくなります。

 少し不機嫌が入っているせいか手首を掴むくれはの力は強く逆らう事が出来ず僕の足も不自然な足取りでドアに向かいます。

「く、くれはちょっと待ってください!」

 咄嗟に大声でくれはに話しかけ、その進行を止める。少しバランスが崩れそうになるのを抑えベッドでむくれているきゅうこ様に向き合う。

 僕の視線に気づいたきゅうこ様はそのむくれた表情を止め、不思議そうな顔で僕と目を合わせる。

「……いってきます、きゅうこ様。帰ったらまたパソコンの事、教えてください」

 精一杯の笑顔を作り、挨拶を口にする。一人で待つきゅうこ様を出来るだけ安心させるよう僕の出来る限り満面の笑みで。

 それを受けたきゅうこ様は少し驚いたような顔をしましたが、すぐに笑顔を作って僕に返事を返してくれます。

「はい、いってらっしゃい。今日も貴方は素敵よ、自信を持って出かけなさい」

「ありがとうございます。ほら、くれはも……」

 そう言ってくれはにも挨拶を急かします。

「はぃ……九子様、行って、来ます」

 くれはの挨拶は少し気恥しそうで、ぎこちないです。

「いってらっしゃい。今日も環の事、頼んだわよ」

 それを見て愉快そうに笑うきゅうこ様ですが、その顔は嬉しそうでやっぱりこの二人が仲良しなんだというのが見て分かりました。

 手を振るきゅうこ様にお辞儀をして、くれはと二人で部屋を出る。長い起床となってしまいましたが、いつも通りと言えばいつも通りの朝を過ごし僕とくれはは学校に向かいます。

 初めて会った頃はきゅうこ様とこのように親しくなれるとは思っていませんでしたが、きゅうこ様とくれはの三人で過ごす毎日はとても楽しく朝の何気ないやりとりも今の僕には大切なひと時です。

 僕を永久とわに守りますと言ってくれたくれはと、僕を永遠に愛しますと言ってくれたきゅうこ様……

 今の僕にとっては、二人共、大切な家族です。

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