3.真夜中の逃走劇
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真夜中。
誰もが眠りについた静かな町を一人で歩く男の姿があった。月の光に照らされたその顔には、狼の仮面がつけられている。男は抜き身の剣を手にしたまま足音も立てずに町の隅々に目をこらしていた。目の前を通り過ぎようとした大きな鼠を、男の剣が迷いなく仕留めた。動かなくなった鼠を、男は小さな袋に押し込めた。
ふと男が顔を上げると、酒瓶を片手にふらふら歩く男が目に入った。
時折酒を口に含んでは、まずそうに道端へ吐き出している。
その姿を目にした男の目が、仮面の隙間から細く絞られるように怒りに満ちた。男はつかつかと酔っ払いに歩み寄り、ためらいなく剣を振る。音もなく鋭い斬撃が酔っ払いを一刀両断にしたかに見えた。
だが酔っ払いは体をくねらせ、ふらりと見事にかわした。
仮面の男は、自分の一撃が交わされたことが信じられない様子で、剣を振った姿勢のまま動くことができない。
そんな仮面の男を気にもせず、酔っ払いは先ほどまでの千鳥足が嘘のように軽やかに歩き始める。黒ずくめの男は慌てて追いかけるが、酔っ払いの足取りはどんどん速くなり、行き止まりの路地の塀を軽々と乗り越えると一目散に走り出した。
仮面の男も全力で追いかける。
鬼ごっこは数分続き、ようやく酔っ払いが足を止めたのは、昼間に旅芸人たちが踊っていた広場だった。
酔っ払いは広場の真ん中に立ち、その両脇には二つの人影があった。
黒ずくめの男は、人数が増えたことに驚いたように足を止める。
酔っ払いは大きく息を吐き、「お待たせしました」と二人の影に声をかけ、頭にかぶっていたボサボサ髪のかつらを脱ぎ捨てた。
素顔を現したのは、俺だった。
広場で待っていたのはもちろん、ゼリアとヒルダだ。
「お疲れ様でした、ライネル。やはり食いついてきましたね」
ゼリアが満足げにうなずき、俺に剣を差し出す。
「待ちくたびれたわ。風邪でも引かせるつもり?」
ヒルダはため息混じりに悪態をついた。
「かなり全力で走ったんですけど…」息を整えながらゼリアから剣を受け取ると、
彼女がにっこりと微笑んだ合図で、俺たちは同時に高く跳び、くるりと一回転して並んで着地し、黒ずくめの男に剣を向けた。
「始めましょうか、殺し屋さん」
ドラクエで職業を選ぶときに、踊り子とか選びたくなるんだけど、戦闘で役立つかどうかを考えるとためらってしまうくらい慎重派です。踊り子への憧れ。




