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2.憲兵隊長サバザ

2話目に来てくれてありがとうございます。

 顔を上げると、そこには俺よりも遥かに大きく屈強な体格を持つ、憲兵の制服を着た男が腰に手を当てて仁王立ちしていた。

とたんに周りで騒いでいた群衆が口をつぐみ、そそくさと去っていった。後に残された俺は立ち上がって「何か用ですか?」と尋ねる。

「その金はあなたが落としたものですか?」と男は思ったより優しい声で、細い目を微笑みで更に細くしながら詰め寄ってきた。

「ああ、はい。先ほどここで演舞をして、その報酬です」

「演舞!見たかったですね」と残念そうに男は天を仰ぐ。

「しかし…本当に間違いないのですか?その中に、昨日から落ちていたものが混ざっている可能性は?」

「ないと思いますけど……」

「絶対にないと言い切れます?」

微笑みながらも泥棒扱いしてくるこの男に得体のしれない気味悪さを感じた俺は、これ以上主張を繰り返すのは良くないと直感した。

「もしかしたら、そうかもしれませんね」俺は少し嫌味を込めて答え、立ち上がりながら拾ったコインを彼に渡した。

男は微笑んだままそれを受け取り、ポケットへと滑り込ませる。

「私はこの町の憲兵隊長サバザ。この街に犯罪者はいないんですが、なぜだか分かりますか?」

「さあ、なぜでしょうか」

「私がが見逃さないからです。」とサバザは胸を張った。

「だからこの街で罪を犯す者は、よそ者だけなんですよ。この街の治安を守るためにも、気を付けてお過ごしくださいね」

サバザはそう告げると、ゆっくりと背を向け広場を去っていった。

後片付けを済ませて広場を離れた俺たちは、夕暮れに染まり始めた街並みを背に、今夜の宿場へと足を向けていた。

仕事を終えた男たち、遊び疲れて眠そうな子供たち、夕暮れの風に洗濯物を揺らす女たち。皆が大切な誰かに向けて優しい笑顔を交わしている。

「いい街ですね。みんなが安心して暮らしています」

ゼリアが静かにつぶやくと、ヒルダも頷いた。

「本当。無防備なくらいに穏やかで」

「きっと、あの憲兵隊長みたいな人が頑張って守っているんでしょうね」ゼリアの無垢な微笑みに、俺は思わず一言言わずにはいられなくなってしまう。

「綺麗すぎる。人間はそんなに清廉潔白に生きられない」

こんな理想郷のような世界が本当にあるとは信じられなかったからだ。喜びがあれば必ず悲しみもある。楽しみがあれば怒りもある。人はそうやって生きている生き物だ。

「お前、それって自分が汚れてるって宣言してるようなもんだな」と、ヒルダが皮肉たっぷりに笑う。

「そう思われても構わない」と俺は苦笑いを浮かべた。

「とにかく、この街はどこかおかしい。自然じゃない」

俺の言葉に、先を歩いていたゼリアが立ち止まり振り返った。

「どうやってこの街を綺麗に保っているんでしょうね」

少し考えて、いいアイデアを思いついた俺はゼリアの瞳を見つめ返した。

「汚してみれば、わかるんじゃないか?」



サバザという名前はなんとなく直感で変な名前にしたくて付けたんですが、変換しようとすると「鯖座」という知らない名前の星座が出てきて面白。

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