⑧ 修の新たな超能力
5月のGWも終わったある日の昼休み、彩子が修を屋上に誘った。
並んで弁当を食べながら彩子が切り出した。
「肝心なこと聞いてなかったんだけどサ。アタシのオーラってどんなの?」
「特にどうってことないよ」
修は以前、登校のバスの中で彩子のオーラを見たことがあった。
ムッとした彩子が弁当を置いて立ち上がった。
「ちゃんと見てヨ」
修も箸を置いてしぶしぶ立ち上がり、彩子の正面に立って意識を集中した。
「情熱の赤だよ。バイタリティや積極性を表す色だね。普通の人でも、怒ったり泣いたりすると一時的に赤いオーラが出る」
「分かった、ありがとう。ところで、オーラが見える人ってヒーリングや除霊なんかもやったりするじゃない?修は?」
「やったことない。実験してみようか?目を閉じてみて」
言われたとおりに目をつむった彩子の左胸を修は人差し指で押した。
制服を通して彩子の胸の柔らかい感触を感じた瞬間、修は平手打ちをくらった。
「何すんのヨ!」
「だから、実験って言ったろ?さ、両手を出して」
修が自分の両手を前に出すと、彩子もふくれっ面のまま同じように手を出した。
修は彩子の両手を握り、心の中で「ヒーリング」という言葉を呪文のように唱え続けた。
すると、大きく燃え上っていた彩子の怒りのオーラがみるみるうちに収まっていくのが修の目に見えた。
握っていた手を修が離すと、彩子は目を丸くして言った。
「びっくりした! あっという間に気分がすごく爽やかになった。やればできるじゃない」
「いけそうな気はしてたんだけど、ヒーリングをやったのは初めてだよ」
「不思議よね、手を握っただけなのに」
そう言って自分の手のひらを見た彩子が「わっ!」と大声を上げた。
「ほら、見て、見て!」
彩子が差し出した右手の手のひらには何も変わったことはなかったが、それが彩子には驚くべきことだった。
「アタシ、よちよち歩きの頃、家のガラス戸に倒れこんで手のひらをざっくり切ったの。その傷がうっすらと5センチくらい残ってたのヨ。それが消えちゃってるわ。どういうこと?」
「へえ! 俺、肉体面のヒーリング能力も持ってるのかな」
修は、ズボンの裾を膝までまくり上げた。
中学校でバレーをやっていたので、レシーブですりむいた跡が薄いシミになって膝下に残っている。
左右の膝のその部分に手のひらを当てて、意識を集中した。
しばらくさすった後に手をのけると、シミはきれいに消えていた。
「見ろよ! 俺の白いオーラはすごいぞ。白はナイチンゲールの象徴でもあるしな」
しゃがんで興味深そうに修の膝を見ていた彩子が顔を上げた。
「白? 珠ちゃんのオーラの説明と違ってない? 白は純真さを表して、癒しのオーラはピンクって言わなかった?」
「うん、それが一般的な解釈だよ。けど、白がレベルアップすると、全ての色を含む強力なエネルギーを発揮するって本に書いてあるんだ。俺がその力を持ってるなんて、なんか恐い」
彩子は修の不安などそっちのけで、貯水タンクの台座に腰かけてスカートを太ももの中ほどまでたくしあげた。
「このホクロを消して。ずっと気になってるの」
彩子が指さした先を見ると、左の内またに確かに大きめのホクロがある。
修は彩子の左側に座って右手を彩子のホクロに当てて暫くさすった後、手を離した。
「あれ? 消えてないヨ、修」
「やっぱりね」
「どういうことなの?」
「だってホクロはケガや病気と違って、治るとか治らないとかいうような体の異状じゃないだろ?」
がっかりした顔でスカートを元に戻した彩子は、ハッとした顔を修に向けた。
「『やっぱりね』ってことは、それ初めから分かってたのよネ? なぜやってみたの?」
「彩っぺの太ももに触れるチャンスはそうそうないからね」
「もうー!」




