⑦ 珠子の質問攻め
彩子と修の打ち明け話を聞いて以来、珠子は二人の超能力について興味津々だった。
昼休みに屋上の貯水タンクの台座に腰かけて弁当を開くと、すぐに珠子の質問が始まる。
「彩ちゃんは、神様の夢から覚めてすぐ試したの?」
「ううん。このS高の入学式の日が最初。ママと一緒に登校したら正門脇の花壇に蝶が飛んでたの。それで夢のことを思い出して指で『蝶』って書いて、蝶が自分に寄ってくるところをイメージしたの」
「どうなったの?」
珠子が弁当を食べる手を休めて先をせかす。
「10匹くらいだったかな、飛んでた蝶が全部寄ってきた。ママは単純に気味悪がってたけど、アタシも『ホントウだったんだ』って思って、ゾクッとしちゃった」
修が話に割って入った。
「しかし、よく蝶という漢字が書けたね。週末課題の漢字のドリルをチャチャッと終わらせる術はない?」
「あるわけないでしょ。忍術じゃないんだから」
「修くんの話で思いついたけど、彩ちゃんは漢字のドリルをしてて例えば『聴』という字を書けば、普段は聞こえない声が聞こえたりするの?」
「ううん。指で字を書いた後、この辺に意識を集中してその漢字の意味を強くイメージ化しなきゃいけないの。これがけっこう疲れるのヨ」
彩子は、自分の額に人差し指を当てながら説明した。
「それ、俺も同じ。その気になって意識を集中しなけりゃオーラは見えないし、見た後はグッタリくるんだよな」
「ふうん、大変なんだ。あ、そうそう、この間彩ちゃんは時間を止めたけど、どうやって元に戻したの?」
「神様は、その肝心なこと、教えてくれなかった。ほっといても適当に元に戻るみたい。でね、ある時テレビで催眠術師が指をパチンと鳴らして術を解いてるのを見て、もしやと思ってやってみたら、ビンゴ! 珠ちゃんと正門で会った時もすぐ指を鳴らしたのヨ」
珠子に感化されて、修も素朴な質問を口にした。
「彩っぺは、ジブりのまっくろくろすけや猫バスに興味があるって言ってたじゃないか。猫バスみたいに空は飛べない?」
「畳の上で腹這いになって『鳥』(チョウ・とり)って書いてみたけど、ダメだった。少し浮いたところで『恐い!』って思った瞬間、畳にドスンって落ちて、あごと胸と膝を打ってスッゴク痛かった」
「まっくろくろすけは?」
修が彩子にそう問いかけた時、珠子が事もなげに言った。
「まっくろくろすけなら、私、見たことある」
「えーッ!」
修と彩子は同時に声を発して、珠子の顔を見た。
「あと、森に行けば妖精もいるし、神社の大きな杉の木には、たいてい神主さんみたいな服装をしたお年寄りの神様がいるわ」
「えーッ!」
今度も同時に声を発して修と彩子が顔を見合わせた時、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。




