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今度のチョウ能力はどんな漢字を使おうかしら?  作者: 仲瀬充


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㊹ 珠子と彩子の恋心

2学期が終わっても3年生は正月前後の6日間以外は補習が組まれている。

しかし、珠子は終業式がすむと冬休み中ずっとモデルとしてのレッスンを受けるために東京へ発った。


大晦日の夜、彩子は母親と一緒にリビングで『紅白歌合戦』を見ていた。

もうすぐ中森セイラの出番という時に、風呂から上がった父親がパジャマ姿でやってきた。


「紅白はマンネリだろ。裏番組のほうが面白いぞ」と、頭をタオルで拭きながらチャンネルを変えようとした。

ダメ! 彩子も母親も異口同音に言った。



セイラが歌い始めると、母親はしみじみとした口調で言った。

「一度握手しただけなのに、何だか他人とは思えないね」


「そうだネ……」

彩子には、それしか言えなかった。


年が明けて1月3日の夜、彩子が洗面所で歯磨きをしていると母親の声が聞こえた。

「彩子、電話よ。出ようか?」


「いい、自分で出る」

口をゆすいでリビングに置いていたスマホのケースを開けると「石嶺星子」からの着信だった。


ひやりとした彩子は、母親を横目で見て「もしもし」と応答しながら自分の部屋へ移動した。

「彩子? 明けましておめでとう。年末はパパがお世話になったわね」


「はい、今年もよろしくお願いします。珠ちゃんは元気にしてますか?」

「あの子、本当にいい子ね。みんなに好かれてるわ、モデルの業界は足の引っ張り合いも多いのに。珠子ちゃんの年明けのレッスンは明日からだから、元日からうちに泊めてるの。寮は寂しいと思って」


「よかった。じゃ、元気なんですネ」

「それが、そうでもないのよ」


「何かあったんですか?」

「彩子の友だちの修くんと言ったかな、彩子はあの子のこと、どう思ってるの?」


「どうって、ただの幼なじみですけど?」

「本当にそれだけ?」


「はい。それが何か?」

「珠子ちゃんがね、彼のこと、好きなんだって」


「えっ、そうなんですか?」

「元気がないから聞いてみたら、卒業して東京に越してきたらもう会えなくなるかもしれないって涙を流すのよ。だから私、告白してみたらって勧めたの。そしたら何て言ったと思う? 彩ちゃんに悪いからって言うのよ。可愛いじゃない」

彩子と修がじゃれ合う場面を見て、珠子がたびたび羨ましがっていたのを彩子は思い起こした。


「じゃ、彩子のほうはほんとにいいのね?」

「はい。アタシのことは気にすることないって珠ちゃんに伝えてください」


「よかったわ。彩子も彼に気があるかもって思って、この電話は珠子ちゃんには内緒でかけてるのよ。あ、それから、紅白見てくれた?」

「見ました! セイラさんが紅組では一番輝いてましたヨ」


「ありがとう。ええと、あの……」

「ママも一緒に見ました。一度握手してもらっただけなのに他人とは思えないって言ってました」

しばらく返事がなかった。


彩子はセイラの気持ちを察してじっと待っていたが、電話口のセイラの声は明るかった。

「じゃ、珠子ちゃんがそっちに帰ったら修くんにアタックするように今からけしかけるからね。バイバイ」


電話を切った後、ベッドに入った彩子は自分の胸の奥がうずいているように感じられてとまどった。

家が近いせいで小さいころから一緒に遊んだりしていたが、思春期になると修が自分に異性としての特別な思いを抱き始めたのを彩子は感じていた。


彩子のほうは、修のことをそれほど意識していないと自分では思っていた。

しかし、振り返ってみると、高校2年生のスタート合宿の時、暗がりで修に肩を引き寄せられた時のことが甘酸っぱい感覚とともに唐突によみがえった。


それだけでなく、すべて超能力がらみのなりゆきとはいえ、胸をつつかれたり太ももに触れられたりしてもそれを決して不快に感じてはいなかった自分がいたことにも思い至った。

幼なじみの延長として馴れ合う関係を続けるうちに、修への恋心が自分の胸の中に少しずつ芽生えていたことに彩子は新鮮な驚きを覚えると共に、先ほどのセイラへの返事を後悔する思いさえも湧いてきた。

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