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今度のチョウ能力はどんな漢字を使おうかしら?  作者: 仲瀬充


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㊴ 新たな問題の出現

学園祭の代休明けの日、彩子たち3人が放課後にJinJinに寄ると、おばさんが珠子を見て言った。

「あらあら、あんた、べっぴんさんになったねえ」

珠子はミスコンの後は元通り黒ぶちメガネをかけて髪も三つ編みにしているが、それでも漏れ出る美しさは隠しようがない。


修もステージ上の珠子を見た時は見とれてしまったが、それとは別に気にかかっていたことを口にした。

「珠ちゃん、ミスコンの時、体調悪くなかった?」

「うん、前の晩にあんまり眠れなかったの」


「やっぱり不破が何かしかけたんだな」

「どういうことなの?」


「珠ちゃんがステージに出て来て体が固まったみたいだったから、おかしいなと思って珠ちゃんのオーラを見てみたんだよ。そしたらうっすらと黒いベールがかかってた。歩き始めたら薄くなって消えたんだけど」

「あの時は、ちょうどスキップができない人みたいに、足をどう踏み出していいか分からなくなって焦ったわ。でも彩ちゃんが『気楽にネ』って言ってくれたのを思い出したら足が動いたの。歩き方も思い出したけど、途中で変えたらおかしいからさっさと普通に歩いちゃった。ひょっとして彩ちゃん、何か超能力を使ってくれた?」

「ううん、何にも。自然体の珠ちゃんから出るオーラが不破くんの呪いを解いたのヨ、きっと。不破君のねらいが裏目に出て、いい気味だわ」


学園祭に続いて翌週に体育祭も終わると、勉強、勉強の毎日が3年生の彩子たちを待っていた。

2週間に1回のペースで週末に対外模試があるのだが、修の成績がグングン上昇して偏差値がコンスタントに70を超えるまでになった。


昼休みに彩子たちが集まっても、卒業後の進路が話題の中心になる。

3人の中では彩子が一番ブレがなく、地元国立大学の看護学科、一本ねらいである。


「修の成績の上がりよう、半端ないよネ。志望校はどこにしてるの?」

「地元の医学部にしてるけど、先生に『もったいないから東京に出れば?』って言われて悩んでるんだ。珠ちゃんはどうするの?」


珠子は学園祭後、学校の許可を得て週末に東京へ出かけることが多くなった。

高校卒業後すぐにデビューできるよう、モデルスクールに通うためである。


宿泊場所は、中森プロダクションの寮の一室が用意されているが時にはセイラの自宅に泊まることもある。

「一生、モデルってわけにもいかないから、芸能活動は東京の私大に通いながらやるわ。将来のことを考えて経営学の勉強もしとこうと思って」


秋が過ぎて12月も半ばになった頃、彩子にセイラから電話があった。

「彩子? 待って、パパに代わるから」


電話口の中森氏の声は、低く沈んでいた。

「彩子ちゃんは安仁屋幸三(あにやこうぞう)という男を知っているかい? 沖縄で昔レストランをやっていて、君のお母さんをよく知っていると言うんだ。もちろん君のお父さんと結婚する前のことだが」


「その名前は初めて聞きました。でも、私のママが高校を出てすぐ那覇市内のレストランで働いてたことは知ってます」

「ふむ。去年の君のおばあさんからの手紙にもそのことは書いてあったから、多分そのレストランの主人だったんだろうが、私をゆすりに来た」


中森氏によれば、安仁屋が語ったのは次のようなことだった。

・自分の店で働いていた石嶺信子と米兵との間に子供ができ、育てきれないというので知り合いに頼んで東京郊外の施設に預けた。

・最近その知り合いから、預けた赤ん坊が人気アイドルの中森セイラになっていることを聞いた。

・その子の実父の米兵のことを調べてみたら、石嶺信子と交際する前から既にアメリカ本国に妻子がいたことが分かった。

・以上のことから中森セイラは不倫の子ということになり、マスコミに知られたらイメージダウンになるのではないか。


「その男は今は東京で沖縄料理店をやっているらしいが、経営が苦しいとほのめかした。直接金を要求すれば恐喝罪になることを知っているんだろう。ずるがしこい奴だ。こっちは公表されても構わないんだが、君のお母さんの立場もあるだろうから、セイラの実母のほうと相談して返事すると言って帰したんだ。私がセイラの実母を知っていることに向こうは驚いていたようだったがね。彩子ちゃん、何か考えがあるかね?」


彩子はしばらく考えてから言った。

「おばあちゃんが生きてた頃も、ママは沖縄に帰省したがりませんでした。余りいい思い出がないんだと思います。セイラさんが自分の娘だということも母には知らせないほうがいい気がしますし、付き合ってた人に奥さんや子供がいたと知れば、もっとショックを受けると思います」


「やはり、そうだろうね。私もそう思ってセイラと話してたら、セイラがわけの分からないことを言うんだよ。代わるから聞いてやってくれ」

セイラは側にいたらしく、すぐ電話に出た。


「彩子のおばあさんがね、『彩子を頼れ。わしが直接その男と話をする。』って言うのよ」

「え? え?」


電話口でセイラが言ったことの意味は、中森氏と同じように彩子にも全く分からない。

「順を追って話すわね。私が乳がんで苦しんでた頃、『ダレカ、タスケテ』って祈ってたら、私のおばあさんでもあるけど、あなたのおばあさんと交信ができるようになったの。彩子よりも私のほうがテレパシーの力は強いみたい。それで今度のことでおばあさんに語りかけたら、さっきみたいに言ってきたのよ」


セイラがあの世の人とも交信ができると知って、彩子は少し背筋が寒くなった。

「分かりました。と言っても、何のことだかアタシにもよく分かりませんが、しばらく時間をください」


電話を切った後、いくら考えても彩子はどうしていいか見当もつかなかった。

とりあえず「重」と指で書いて、祖母の霊と同調してテレパシーが通じるかを試みたが、何の反応もなかった。


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