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今度のチョウ能力はどんな漢字を使おうかしら?  作者: 仲瀬充


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㉚ 祖母の死とセイラの記者会見

12月26日の夜に彩子が東京から帰り着くのと入れ替わるように祖母は沖縄に帰っていた。

「ママ、具合はどう? 頭が重いとか言ってたけど」


「彩子がいない間に治ったわ」

「ひどい。それじゃ、アタシが疫病神みたいじゃない」


口ではそう言ったものの、母親とセイラの体調がリンクしていたことに気づいた。

母親に超能力はなくても、親子としてセイラと深いところでつながっているのだと思うと彩子は胸が熱くなった。


夕食をすませて彩子は自分の部屋から電話をした。

「おばあちゃん? アタシ」


「おお、彩子か。星子を治してくれてありがとうの」

「分かるの?」


「ああ。昨日から星子の元気な念が伝わってきとる。友だちの子にもお礼を言っておいておくれ」

それならヒーリングの経過の報告は必要ないと思い、彩子は中森夫妻の話をした。

中森夫妻がセイラを引き取ったいきさつを聞きながら、祖母は弱々しく「うん、うん」とうなずいた。


「いろいろと世話になったのう。信子と政夫さんにもお礼を言っておいてくれ。彩子も元気でな」

最後にそう言って、祖母は電話を切った。


その祖母は、年が明けた新年早々の1月4日に亡くなった。

家の裏手の畑で倒れているのを隣家の人に発見され、警察によると急性心不全ということだった。


彩子たち親子3人は、急きょ沖縄へ飛んだ。

祖母を荼毘(だび)に付した後、近所に挨拶して回ったり、不動産業者に祖母の家屋や土地の売却を依頼したりして帰宅した。


沖縄から戻ると3学期は既に始まっており、担任の南田をはじめクラスメートが彩子に慰めの言葉をかけてくれた。

放課後、修と珠子は彩子を「バーガー浦川」に誘った。


「彩ちゃんのおばあさん、セイラさんの快復を見届けて安心して逝ったんじゃないかしら」

「うん。おばあさんにとっては孫なんだから、セイラさんが元気になって思い残すことはなかったと思うよ」


「おばあちゃんは予知能力があったから自分の死を悟ってたと思う。アタシが最後に電話した時に『彩子も元気でな』って言ったのが、今思えば別れの言葉だったんだわ」

修と珠子もしんみりと視線を落とした。


「バーガー浦川」はS高に近いので、JinJinよりもS高生の客が多い。

この日も10名ほどのS高生で賑わっていたが、急に話し声が途絶えた。


皆、店の奥に据え付けてあるテレビの画面に注目している。

中森セイラの復帰記者会見が始まっている。


セイラは年末にT病院を退院し「中森セイラ、奇跡の快復」などと騒がれた。

退院後は自宅療養しながらボイストレーニングに励んでいたということだった。


画面のセイラの横には、父親でありプロダクションの社長でもある中森氏がいる。

会場となっているホテルの華やかなライトに照らされ、机上に置かれた何本ものマイクを前にして座っている二人を見ると、彩子には自分の手の届かない世界の人たちに見えた。


芸能リポーターの質問を受けて、セイラが「奇跡の快復」について話し始めた。

「入院中、はるばる九州から3人の高校生たちがお見舞いに来てくれました。これまで会ったことのないような、天使みたいに素晴らしい子たちでした。その3人に私は大きな力をもらって元気になり、今ここにいます。この場を借りて改めてお礼を言いたいと思います」


セイラと中森氏が壇上で頭を下げた時、彩子も思わず頭を下げそうになった。

記者会見の中継が終わると、店内は再び話し声で満ちた。


「九州のファンって、どこの高校だろう?」

「俺たちが行っても会ってくれたのかな?」


S高生たちのそんな会話を聞いて、彩子たちは面映ゆいような、誇らしいような気持ちになった。

「あれからまだ一か月も経ってないのよね」

珠子の言葉が、彩子と修の気持ちも代弁していた。

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