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今度のチョウ能力はどんな漢字を使おうかしら?  作者: 仲瀬充


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㉖ 彩子たちと中森セイラの対面

彩子たちがT病院に着いて入り口の自動ドアが開くと、彩子の耳にセイラの声が聞こえた。

「マッテイタワ」


部外秘であるはずのセイラの病室を受付で尋ねると、話が通じているらしくすぐに受付嬢が彩子たちをエレベーターまで案内してくれた。

「最上階の特別個室Aでお待ちでございます」


彩子たちは、エレベーターを降りるとコートを脱いでドアをノックした。

どうぞ、との声で中へ入ると、ソファーから中森夫妻が立ち上がった。


ソファーの向こうのベッドで、セイラも上半身を起こした。

ニット帽を被っているのは、抗がん剤等が髪の毛に影響を及ぼしているのだろう。


「初めまして。伊達彩子といいます」

続いて、修と珠子もそれぞれ名乗った。


「さあさあ、こちらに来て座ってちょうだい」

中森夫人は、彩子たちをソファーに招いた。


ソファーに座る前に、彩子たちはベッドの側へ行ってセイラにも挨拶をした。

「セイラさん、こんにちは」


ずっと憧れていたスターであるが、父親違いの姉でもあると思うと彩子は複雑な気持ちだった。

「よく来てくれたわね。ありがとう」


修と珠子は、挨拶がわりに頭を下げた。

「あら、あなた、美人ね」


セイラは珠子を見てそう声をかけた。

珠子は顔を赤らめたが、彩子はちょっと不満だった。


珠子は身長こそ170センチ近くあるがやせぎすで、黒縁メガネをかけて髪は三つ編みにしている。

彩子は心の中でひそかにテレビアニメ『ちびまる子ちゃん』の「たまちゃん」とイメージをダブらせている。

そんな珠子よりも自分のほうが可愛いいと彩子は自負しているのだ。


ソファーに3人並んで座ると、彩子はコートのポケットに入れておいた手紙を取り出した。

「これは私のおばあ……、祖母からの手紙です。読んでください」


テーブルを挟んで彩子たちの前に座っている中森氏が受取って封を切り、便せんを広げて読み始めた。

夫人も横から顔を近づけて一緒に見ている。


彩子は、手紙の内容をあらかじめ祖母から聞かされていた。

次のようなことが書かれているはずである。


・自分(祖母)の娘(彩子の母の信子)が沖縄でセイラを産み、セイラが東京郊外の施設に預けられるまでのいきさつ。

・自分と孫(彩子)は特殊な能力を持っており、セイラとはテレパシーによって通じ合えること。

・娘夫婦(信子と政夫)には、セイラが信子の産んだ子であるということは知らせていないこと。

・孫(彩子)と一緒に訪問する子も特殊な能力を持っており、セイラの病状の改善に力を発揮するであろうこと。


夫妻ともに真剣な顔つきで読み終えると、夫人が手紙をベッドのセイラに持っていった。

中森氏が彩子を見て言った。


「君が石嶺彩子ちゃんか」

「伊達彩子です。石嶺は母の旧姓です」


「ああ、そうか、そうだったな。ところで手紙に書いてあったことは、こちらの二人は?」

中森氏は、修と珠子を気にしていた。


「私が話しました。二人とも知っています」

「それなら、何も秘密にする必要はないな」


夫人がいとおしそうに彩子を見つめた。

「あなたがセイラの妹なのね」

「ええ、そうなるみたいです」


人気スターのセイラにとって自分の存在はマイナスかもしれないと思って、彩子はあいまいな返事をした。

彩子はセイラ本人の表情を見たかったが、振り向くことは遠慮した。


「あなたのお母様もおばあ様もご苦労なすったのね。セイラを手放すのはさぞかしお辛かったでしょう」

しんみりした雰囲気を変えるように、中森氏が話題を転じた。

「手紙によると、君たちは特殊な能力を持っているということだが」


ここで修が初めて口を開いた。

「その証明というわけではありませんが、超能力を持つ者の特徴として目が光るということがあるんです。恐らくセイラさんも。カーテンを閉めて部屋を暗くしてもらえませんか」


セイラは手紙を読んでもそれほど驚かず、自分の妹にあたる彩子を親しげなまなざしで見ていたのだが、修の言葉を聞くと不思議そうな表情を浮かべた。

中森氏はカーテンを閉め切り、照明のスイッチを全てOFFにした。


暗くなった室内に、六つの目がかすかな光を放っている。

一言も発しない静寂が、夫妻やセイラの受けた衝撃を物語っていた。


修が立ち上がって電気をつけ、カーテンを開けた。

「君たちには驚かされるなあ……」


中森氏に続いてセイラが言った。

「ママ、私は?」

「あなたも同じよ。どうして今まで気づかなかったのかしら」


「珠子ちゃんと言ったかな。君は光っていなかったみたいだが?」

中森氏にそう言われて申し訳なさそうに肩をすくめた珠子に代わって彩子が言った。

「でも、珠ちゃんもアタシたちと同じくらいに特殊なパワーを持っているんです」


「それは頼もしい。目が光ろうが光るまいが、私たちはもう(わら)にもすがる思いなんだ。よろしく頼む。このとおりだ」

中森氏はソファーに座ったまま、両ひざに手をついて頭を下げた。

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