㉔ 彩子の「澄」能力
祖母と一緒に街から戻ると、彩子はすぐに修に連絡して二人の家から近いショッピングプラザ内のハンバーガー店で会うことにした。
「急用ってのは?」
彩子が祖母から聞いた話を打ち明けると、修は事の重大さにため息ともうめき声ともつかない声を漏らした。
そして何かを思いついたような顔で、珠子にラインを送った。
「珠ちゃんを呼ぶの?」
「うん。それより、セイラの乳がんをどうする? あちこち転移してるかもしれないから、全身に手を当ててヒーリングをやるくらいしか思いつかない。それじゃ俺の体がもたないし、皮膚の表面の傷と違って効果の確かめようもない」
彩子は、店内を見回した。
客はほかにもいたが、幸い彩子たちの近くのテーブルは空席だった。
「ちょっと思いついたことがあるの。見てて」
彩子は、「澄」(チョウ・すむ)という字を指で宙に書き、テーブルの上で左手を下にして両手を重ねた。
そして、右手を少し浮かせて、澄み切った湖のように左手が透明になるイメージを思い描いた。
すると浮かせた右手から不思議なパワーが出ているかのように、左手が徐々に透けていく。
最後は骨の部分だけを残して半透明になり、手の下のテーブルの色が透けて見えた。
店員の気配がしたので彩子が右手の指を鳴らすと、左手も元に戻った。
「ふうっ。彩っぺはいろんなことができるんだなあ。まるで人間レントゲンだ」
「できちゃった! これ、使えるわ。セイラの患部に手をかざして今みたいにやれば癌細胞が見つかると思う。そこに修が手を当ててピンポイントでヒーリングをやればいいのヨ」
「しかし、俺たちの超能力を見たら、セイラ親子はパニくってヒーリングどころじゃないだろう。第一、見ず知らずの俺たちに会ってくれるとも思えない」
「うーん、そこんところはうちのおばあちゃんが何か手を考えてくれると思う」
あれこれ話をしていると珠子がやってきた。
彩子たちを見つけると、カウンターで飲み物だけを買って彩子たちのテーブルにやってきた。
「で、いつ行く?」
「癌の進行は速いし善は急げだから、あさってはどう? 飛行機のチケットとホテルの手配はアタシのほうでする」
椅子に座った珠子は、きょとんとした顔をしている。
「二人でどこか行くの?」
そうだったという顔で彩子は、修に話したことを順を追って伝えた。
珠子は目を丸くして聞いていたが、話が「澄」能力の段になると、カップのストローを口にくわえたまま、飲むことを忘れて聞き入った。
「私もそれ、見たかったなあ」
超能力好きの珠子は、いかにも残念そうな声を出した。
「またいつかネ。でさ、修、なんで珠ちゃんを呼んだの? あ、珠ちゃん、邪魔だって意味じゃないからネ」
「珠ちゃんにも一緒に行ってほしいんだ」
「えっ、私も? 何にも役に立たないのに?」
言葉とは裏腹に、珠子は嬉しそうな表情を浮かべた。
「珠ちゃんの協力も必要なんだ。ほらっ、好事魔多しだよ」
「好事魔多し? JinJinで珠ちゃんがアタシの疲れを取ってくれた時、修は邪気とか何とか言ってたわネ」
「それそれ。セイラは病気で弱っているから魔が憑依している可能性が高い。そしたら俺たちのヒーリングは妨害されるはずだから、珠ちゃんがセイラの手を握ってバリアーを張ってほしい。そしたら、俺たちは癌のヒーリングに集中できる」
珠子の顔が輝いた。
「うん、私、行く行く!」




