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今度のチョウ能力はどんな漢字を使おうかしら?  作者: 仲瀬充


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㉒ 彩子を呼ぶ声

生徒たちが待ちに待った修学旅行の日が来た。

空港までのバスの中から盛り上がってカラオケ大会になったが、彩子は気分がすぐれなかった。


順番で彩子が中森セイラの歌を歌ってマイクを後ろの席に渡すと、隣りの珠子が言った。

「彩ちゃん、元気ないね。セイラが心配なの?」

最近のテレビで、中森セイラが再入院して乳がんが見つかったというニュースが報じられていた。


「それも心配だけど、耳鳴りが気持ち悪いの」

「体育祭の頃から言ってたね。耳の奥がキーンって鳴るって」

「近ごろは、それが人の声みたいに聞こえるのヨ」


飛行機が羽田に着陸すると、最初に浅草を見学し、その後、本郷の宿舎へ向かった。

バスは浅草から西向きに御徒町方向へ走り、やがて本郷3丁目の交差点を右へ曲がった。


「懐かしいなあ……」

最前列の席に座っている担任の南田が、窓の外を見ながら呟いた。


後ろの席の男子生徒が尋ねた。

「先生、この付近に住んでたことがあるんですか?」


「ああ。学生の時にな」

「どこの大学に通ってたんですか?」


南田は、答えるかわりに窓の外へあごをしゃくった。

バスは、東京大学の赤門前を通過するところだった。


「ええっ、先生、東大卒だったんですか!」

その声がバス中に響き、あちこちから驚きの声があがった。


修は、意識を集中して南田の後頭部に目を凝らした。

高い知性を表す青いオーラが出ているのを見て、修は納得した。


ユーモアのセンスを表す黄色いオーラは見えなかったが、それにも納得した。

「さあ、着いた。みんな、忘れ物はないか? 太ってる者は特に念入りにチェックしろ。『小太り後を濁さず』だ」


修学旅行2日目は終日ディズニーランドで過ごし、3日目の自主研修の日がきた。

グループ毎に宿を出て、見知らぬ東京の街で公共交通機関を使って研修先へたどり着くのも学習の一環だ。


彩子と珠子を含む20人ほどの看護系グループは研修先である港区のT病院に向かった。

最寄りの地下鉄の駅から地上へ出ると、徒歩で数分の距離にT病院はあった。


一行は、受け付けをすませると会議室に通された。

T病院の概要や看護師としての心構えなどの説明を受け、質疑応答に入った時に彩子は耳に異変を感じた。


「オ……」

「……テ」


近ごろ、時々聞こえてくる声だ。

その声が少し大きくなったかと思うと、はっきりした言葉として響いた。


「オネガイ」

「タスケテ」


鉛筆を持った手を机の下におろし、彩子は「重」(チョウ・かさなる)という字を宙に書いた。

そして、ラジオのつまみをひねって聞きたい局に周波数を合わせるイメージを描いた。


彩子は、心の中で呼びかけた。

「アナタハダレ? ドコニイルノ?」

「ワタシヨ。ワタシハココニイルワ」


「ドコ?」

「ココヨ……」

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