2/46
② バスの中の痴漢
始業式から10日ほどたった日の朝、彩子はいつものように自宅マンション近くの停留所からバスに乗った。
降りる時に慌てなくていいように前の方へ進んだが、混んでいるのでバスの中ほどで諦めた。
後ろを若いサラリーマンがついてきたが、同じように前に詰めたいのだろうと思って彩子は気に留めなかった。
ところが、バスの揺れに合わせてその男の手の甲が彩子のお尻に間欠的に触れてくる。
やがて彩子は男の生あたたかい体温を感じた。
大胆になった男が手のひらを彩子のスカートに這わせてきたのだ。
彩子は指で宙に「腸」(チョウ)と書き、男のお腹がゆるむイメージを脳内に描いた。
「ああっ!」
若いサラリーマンはバスの最前部へ急ぎ、次の停留所で降りた。
窓の外を見ると、男は尻に手を当てたまま、猛烈な勢いで近くのコンビニに飛びこむところだった。
彩子は声を押し殺して笑った。
そんな彩子のオーラを車内の後方にいた修が驚きの目で見ていたことに当の彩子は気づかなかった。




