⑯ 不破親子の陰謀
不破文具店は、1階が店舗で2階と3階が不破家の住居になっている。
2階のダイニングで夕食を済ますと、父親の健司は流司を3階の自分の書斎に呼んだ。
「流司、今度の日曜日はお父さんに付き合って協力してくれ」
「僕たちが乗りださなくちゃならなくなったの?」
「理事長が出向いて頭を下げても、地主は土地を売ろうとしないらしい。その後理事長が強硬手段に出たんで余計に態度を硬化させたみたいだ」
「じゃ今夜から呪文を唱えるから、田端アパートの正確な住所と地主さんの氏名は分かる?」
「ああ。この紙に書いておいた」
「それと、道砂さんも呼んだほうがいいよね?」
「それがいい。お前から連絡しておいてくれ」
数日後の日曜日、不破親子と道砂芽は、田端アパート1階の田端老人を訪ねた。
インターホンを押して不破健司がS高のPTA副会長である旨を伝えると、田端がドアを開けて3人を招じ入れた。
「お初にお目にかかります。さっそくですが、田端さんの土地のことでS高の理事長から依頼を受けまして、」
田端は話をさえぎった。
「その件なら、理事長から直接聞いた。わしゃ、畑を売るつもりはない。それに、土地を手放す場合は連絡をしてくれと県のほうからも言われておるんじゃ」
拒絶の言葉を口にしながら田端の声に力はなく、目の下には隈ができている。
「まあそう言わずに、今日は息子の話を聞いてやってください。息子はS高の生徒会長をしておりまして、事の発端は息子にあるんです」
田端は、いぶかしげに流司に顔を向けた。
文化部の活動を活性化したい、そのためには専用の部室が必要であることなどを、流司は学校での立会演説会の時と同じように田端に訴えた。
田端は、流司の話を聞いているうちにひどい疲れを覚えて、頭の中が混乱しだした。
話し終わって流司が田端に頭を下げると、横に座っている芽が言葉を添えた。
「私は生徒会の副会長をやってますが、私も文化部なんです。どうかよろしくお願いします」
芽は、頭は下げずに田端の目をじっと見つめた。
芽の目が光りを増した。
田端の頭は、思考を停止した。
流司の父親は、おもむろに書類を取り出してテーブルに置いた。
それを見ながら、修と芽は中学3年の時の落雷事故のことを思い起こしていた。




