⑫ 修に流れる血
8月下旬のある日、夕食後に修の父親がテレビをつけると、怪談話や心霊写真の特番をやっていた。
修は珠子たちに言われたことを思い出して、テレビを見ながら父親に尋ねた。
「父さんは霊感ある?」
「ないな。母さんがいくらかあるんじゃないかな。旧姓が『神』っていうくらいだから」
キッチンにいた母親が食器を洗いながら言った。
「霊感なんてないわよ。先祖の何人かはイタコだったって聞いたことはあるけど」
母親は青森出身だが、青森の恐山のイタコの「口寄せ」は有名だから修も聞いたことがある。
口寄せというのは辞書によれば、霊能者のイタコが神がかりの状態になって霊魂を呼び寄せるというもので、死霊を呼び寄せるのを「死口」、生霊を呼び寄せるのを「生口」、神霊を呼び寄せるのを「神口」というらしい。
洗い物を終えた母親もリビングにきたので、修はイタコについて聞いてみたが、先祖に何人かいたということや遠縁のイタコで行方不明になった人がいるということしか知らなかった。
「それにしても母さんの旧姓の『神』って、マンガみたいな名前だね」
「失礼ね。青森にはわりといるのよ。昔、神なんとかっていう俳優がいたけど、お父さん、知らない?」
「ありゃ芸名だろう。ところで修、S高は敷地を広げようとしているのか?」
「え?」
「仲間うちからの情報なんだが、S高が隣接する土地を買収する動きがあるらしい」
修の父親は、知人の経営する不動産屋に勤めている。
「へえ、本当に学校が動き出したんだね」
そう言って修は、不破流司が生徒会長に立候補した時の公約について話した。
「なるほど、そういう背景があったのか」
後日、修は両親とのやりとりを彩子と珠子に話した。
「先祖にイタコがいたことが分かっただけでも収穫ね」
「おっかしい! 珠ちゃんがダジャレ言うなんて」
「あっ、シャレのつもりじゃなかったんだけど」




