⑩ 落雷事故の新たな事実
不破の目が光っていたという修の話を聞いて、彩子は頭の中にひらめいたことがあった。
翌日の朝食の時に彩子は父親に聞いてみた。
「パパ、古い新聞はどこに行けば見られるの?」
「新聞社が確実だろうね、あと県立図書館とか市立図書館とか。どれくらい前のを見たいのかい?」
「1、2年前の」
「なんだ、それなら学校の図書館にあるはずだよ」
教師をしている彩子の父親は、学校のことには詳しい。
「学校で定期購読している新聞は、2年間くらいは図書館で保存するのが普通だ」
彩子は昼休みに図書室へ行って司書の女性に一昨年10月の新聞の閲覧を申し出た。
地元紙の社会面を見ていくと、例の落雷があった翌日にはその件が小さな記事になっていたが、彩子の予感は当たっていた。
「屋外活動中に落雷で中学生4人が失神」という見出しだった。
記事によると4人とも病院に搬送されたとあるから、彩子と修たちとは別の病院に他の二人は運ばれたことになる。
放課後に彩子はJinJinよりも学校に近い「バーガー浦川」に修を誘った。
校門を出てすぐ、彩子はスマホを取り出して歩きながら電話をした。
「花野中学校ですか? 森田先生をお願いします。私は2年前の教え子です」
スマホを耳に当てたまま、彩子は修に話しかけた。
「大変なことが分かったの。中3の時の落雷なんだけどネ、あ、森田先生ですか? お久しぶりです、伊達です」
中学3年時の担任と彩子とのやりとりを聴いて、修はおおよそを理解した。
電話を終えた彩子は、少し顔色が青かった。
「聴いててだいたい分かったよ。で、俺たち以外の二人は誰だって?」
「不破くんと道砂さん。アタシたちの病院は手狭だったから4人一緒は無理だったのネ。それにあの日は金曜日で、翌週登校しても事件に触れちゃいけない雰囲気になってたから、まさかアタシたち以外にもいたなんて思わなかった」
ハンバーガー店に着くと、修が切り出した。
「同じクスノキの下にいたのか、近くの別の木の下にいたのかは分からないが、不破たちもあの落雷で俺たちと同じようになったみたいだな。道砂さんの目はまだ確認していないけど」
「同じ超能力者どうしなら、不破くんたちとも打ち明け合ったほうがいいんじゃない?」
「それは様子をみた後がいい。昨日、多目的ホールで不破がぶつぶつ言ってたのがこれだ」
修が彩子に示したスマホの画面には、次のように表示されていた。
「 kua ioa mos 」
「何これ?」
「ラテン語だよ。不破が『クア イオア モス』と何度も小声で呟いてたからネットで調べてみたら、黒魔術の呪文だった。他人に自分の思い通りの夢を見させる効果があるらしい。彩っぺは、生徒会役員の投票で不思議なことがあったって言ってたよな?」
「ってことは、不破くんが多目的ホールで昼寝してる人たちの夢を操って、自分に投票させたの? そういえば、悪夢を見ているみたいにみな寝苦しそうにしてたわ。だけど、アタシたちの推測が正しいとしてもヨ、不破くんたちはなぜそうまでして当選したかったの?」
「それが謎なんだよなあ。生徒会長なんか、そんなに魅力があるとも思えないし」
「ふふっ、思い出した。口の悪い人たちは、今回の選挙は野球部の二人が自滅したんだって言ってるわ」
「え?」
「野球部の立候補者二人の名前『久馬嘉也』『宮場香耶』を一字ずつずらせば、二人とも『やきゅうばか』になるっていうのヨ。アタシ笑っちゃった」
「『也久馬嘉』『耶宮場香』、なるほど『やきゅうばか』か。よく気づいたもんだなあ」




