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見習い女神のミッションコンプリート!<完結>  作者: 黎明まりあ


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3/12

3、占い料金

「こっ、この話は実際に起こったこと!

 ええっと、なんて言うんだっけ?

 あっ、そうそう、実話よ!

 じ・つ・わ!」


 占い師は座っていた椅子から立ち上がり、ブルブルと全身をふるわせ、七実へ(うった)える。


 全身が黒いローブで(おお)われているから分かりにくいけど、もしかして、私が信じないせいで(あわ)てている?

 コレはますます(あや)しい……クロだな


 七実を目を細め、目の前の占い師の顔に照準(しょうじゅん)を合わせ、ロックした。


「ほっ、ホントの話なのよ!

 七実と彼、圭三(けいぞう)は、前世の縁で、今世(こんせ)では結ばれなきゃいけないの!

 だから、今回も彼を信じて待つべきよ!」


 今世では結ばれなきゃいけない?

 なんで?


 彼氏の名前まで当たっているので、七実はビクッと体を一瞬(いっしゅん)強張(こわば)らせたが、その後に続いた占い師の意味不明な主張に、体の力がドンドン抜けていき、最後は大きなため息をついた。


「あのねぇ……本業(ほんぎょう)の占い師にこの説明するのも(なん)なん?ってカンジだけど、占いって当たるも八卦(はっけ)、当たらぬも八卦と言って、まぁ、(よう)するにテキトウ……失礼、信じるか信じないかは本人次第(しだい)なのよ。


 そして今回の占い内容は前世!

 前の人生があなたの言う通りだと、今を生きている私の記憶には、当然ながらナイわ。

 仮にあなたが言っていることが正しいとしても、前世と今は違うし、前世通りにする必要はないもの。

 逆に今度は、違う道を選んでもイイはずよ」


 七実の言葉を最後までジッと聞いていた占い師だったが、つい先ほどまで(あわ)てふためいていた態度を一変(いっぺん)させ、落ち着いた声で、再び七実に問いかける。


「じゃあ、聞くけど、幼い頃から何度も()り返し、同じ場面を夢見るのはなぜ?

 圭三に会った瞬間、この人だと思ったでしょう?


 姿は変わっていても、圭三の本質は前世の彼だから……そうねぇ……(おも)いが1番あらわれる瞳、最愛のあなたを見つめる、優しくて……時には熱のこもった眼差(まなざ)しに、七実は何度もドキッとしたこと、あるんじゃない?

 そして、圭三のことを想うと、七実の胸にグッと(せま)る感情……それはいったい、どこから来ていると思う?」


 先ほどと反対に、今度は七実のこめかみから、汗がブワッと出てきた。


 心臓の音がヤバいんだけど?


 そんな自分の動揺(どうよう)を目の前の占い師には(さと)られたくなくて、七実はすぐさま言い返す……しかし(おさ)えきれない、胸を熱くする何かがドボンとこぼれ落ち、言葉を()まらせた。


「しっ、知らないわよ!

 そっ、そんなこと!

 まぁ、いちおう、彼も私のコト好きだったし、私も彼を好きだった!

 両思いなら、そんな目で見るのは普通だよね?」


 ヤバい、全然、心臓のドキドキがおさまらない!

 とてもじゃないけど、なぜか冷静でいられないわ!

 こういう時は、アレよ!

 アレ!!


 七実はそう心に決めると、限りなく何気(なにげ)ない(ふう)(よそお)い、占い師の顔から視線をズラしながら切り出した。


「あぁ、もう!

 これで占いは終わったのよね?

 帰るわ!」


 そう言って、席を立とうとした七実に、占い師は声を張り上げる。


「ちょぉ~と、待ったぁ~!

 占ったお金、もらってないんですけどぉ~!」


 そうだった!

 たとえ不本意(ふほんい)な結果であっても、占ってもらった、いわば労働に対する対価(たいか)は支払わないと!


 七実は理性を総動員(そうどういん)して、なんとかその場にとどまることに成功した。


 ハイ、ハイ、(はら)えばいいんでしょう?

 払ってこの場所から、早く逃げるわよ!


 七実の意識は、この場からいかに早く逃げ出すかに埋めつくされているため、占い師に少々(ざつ)に、サクッと値段を聞く。


「で、いくら?」


 ちょっと待って!

 占い料金って、占い師本人が決める自由価格だから……高いところは相当高いわよね?


 その七実の心の声を読んだかのように、占い師は声に力を込めて言ってきた。


「高いわよ……」


 占い師の言葉を聞いて、七実の肩にポタリ、ポタリとこめかみからの汗が落ちる。


「わっ、わかった……そっ、それで……いっ、いくらなの?」

「にっ……」


 に?

 その後にいくらゼロが続くのぉ!

 ヤバい……近くにATMあるぅう?


 七実の(ひたい)からも、冷たい汗が()き上がる。


「にせんごひゃくえん!」

「2500円?」


 やすっ!


 対面の占いって、最低でも3000円からって友達が言ってたような……そして恐ろしいことに、上限(じょうげん)はないって!


 そんなことを思って、ボンヤリとしていた七実の行動が不自然に(うつ)ったのか、占い師から問いかけられた。


「もしかして……高い?」

「いやいやいやいや……むしろ」

「むしろ?」


 ちょっと待って、七実!

 ここで素直に安いと言って、ケタ数を増やされても困るのは自分!

 だからこの答えの正解は……


適正(てきせい)価格でステキだなぁ♡と思ったの」

「そうね、イイ値段でしょう?

 実はね、この価格に決めたのは……」

「決めたのは?」


 神様、どうかケタ数が増えませんように!と祈りながら、七実は占い師の言葉をなぞった。


「この家業(かぎょう)、私で25代目なの!

 だからぁん、2500円!

 ステキじゃない?」


 声からご機嫌な様子がうかがえる占い師の気分を、こちらから積極(せっきょく)的に下げたくない


「えっ、ええぇ、とってもイイと思うわ!」


 七実は首を勢いよく上下に振って、激しく同意を(しめ)しながら、財布を取り出した。

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