ストレンジ・デイズ
おかしな日々(ストレンジ・デイズ)が俺たちを見付けた。
おかしな日々(ストレンジ・デイズ)は俺たちをつけ回す。
とうとう奴等は俺たちに追いついた。
俺たちは、気付かぬ素振りでバカ騒ぎを続けるのか、あるいはこの街を去るべきか…。 『ストレンジ・デイズ』ザ・ドアーズ
1
リビジット
〈バビロン再訪〉
まだ、時間が少し早いからだろうか、その街は以前よりひっそりとして、幾分、煤けたような印象を僕に与えた。
狭い歩道で手を繋いで座る若い男同士のカップルも、街頭で客を待つ所在なげな男娼の少年も、もはやあの頃のように、僕の心を溢れるような予感でかき立てたりするような事はない。
通い慣れた人間でなくては見落としてしまうような、みすぼらしいビルの脇の階段を昇り『ル・ヴァルテ』のその黒い扉に手を掛けた。
扉を開くと、店の中央に一つだけ置かれたビリヤード台で一人の男が玉突きをしているのが分かった。男は、一瞬微かに僕を見たものの、すぐに台に視線を戻した。
キューを二三度ストロークさせ、白い手玉を軽く突く。手玉はラシャの上を真っ直ぐ滑走して、ポケットに三番球を突き落とした。
「真琴かい」
キューの先にチョークを塗りながら、彼は台の展開を読んだ。「怜なら、もうこの店には来ないよ」
「いや、そう言う事ではないんだ…」
「だったら、適当な所に座って待っててくれないか、酒なら勝手に出して飲んでくれてもいい。このゲームが終われば、店は開ける」
「ゲーム、一人で?」
僕が言うと、彼は口髭の乗った唇を歪めて小さく笑った。
「人生なんて、所詮一人でやるゲームだ。そう思わないか?」
「分からないな」
僕は狭いカウンターに入り、バーボンと底の広いタンブラーを取り出した。
「まあ、この街も不景気でね。客なんか殆ど来ないんだよ。今となってはこの店も自分のためだけのゲームのような物だ」
キューは手玉の端を擦るように突き出される。捻りを掛けられた白球は、九番球の脇をゆっくりと過ぎた後、サイドクッションで不自然な角度のターンを見せた。
手球が、計算どうりのラインを辿って、紫の四番球に軽く触れると、四番球はカチッと言う音と共に、ポケットへ向かって転がり始める。
「みんなはどうしたの?」
「みんな、それぞれのゲームに散っていったさ」
五番球はイージーなポジションだった。
「コウジは田舎に帰ったよ」
五番球を落とした手玉は、進路を右に変えた後、六番球の真横にピタリと止まる。
「ユウは、結婚したよ。もちろん女とだよ。子供もいるそうだ」
六番球を片付けた後、彼はキューにチョークを塗りながら、サイドクッションを使っての七番球攻略に狙いを定める。
「北浦は、近所の店でオカマやってるよ。信じられるか? あの女装者嫌いの北浦が羽根飾り付けてショーのレビューにも出てるって」 キューを使って慎重に、角度を調べる。
「まあ、あれは近親憎悪って奴だったのかもな…。うーん。こいつはちょっと難しいな…」
慎重に手玉を見つめる。
「そして、怜は…」
ストロークを何度か繰り返した後、意を決したように手玉を突いた。思いのほか早い球だった。クッションした白球は七番球の端を掠め、反対側のサイドで再びクッションをする。七番球は遠く離れたコーナーポケットを目指して動き始めたが、すぐにその動きを止めた。白い手球は三度目のクッションの後、ほぼ中央にあった九番球にぶつかり、あっさりとポケットに落ちていく。「まだ、この近くにはいるよ。あいつのいる店も知っている。もし興味があればだけれどね…」
僕は何と答えていいのか分からない。
タンブラーの底に注いだ褐色の液体をストレートで一気に呷った。
液体は焼けるような熱さを共に、喉を流れ落ちていく。
2
〈楽園のこちら側〉
まず、最初は列車の窓から眺めた光の洪水だった。今まで自分が見た事もない不夜城都市の輝かしい光景。
故郷の人々が怯え、妖魔の息遣いすら幻想した漆黒の闇を、いともたやすく征服しつくした都市の姿が、僕にとって、この都市の最初のシンボルとなったのである。
二つ目は、雑誌で読んだ知識をもとに辿り着いた街で、右も左も分からない様子の僕に笑い掛けてくれた青年。
「一緒に来いよ。一杯奢るよ」
彼、神崎怜、は僕の話を聞いた後、優しく肩を抱いて、『ル・ヴァルテ』の階段に導いた。
二つ目のこの街の象徴である。
光の意味する物は希望。神崎怜の意味するものは、僕を受け入れる『癒し』の世界だった。
しかし、怜には三つ目の象徴があった。そして、僕はそれを何処かで永遠に見失ってしまう事になるのである。
『ル・ヴァルテ』で少し飲み過ぎた僕を、怜はホテルの部屋へと誘った。
僕はその夜、初めて他人の体を自分の中に受け入れる体験をしたのだった。
怜の行為は僕の自意識を巧みにくすぐり、そして凝り固まった自尊心を乱暴に貫いた。 僕は未知の痛みと自堕落な悦びのなか、その先にある底無しの快感を志向するようになった。
例えば僕を四つん這いにして、動物のような恥ずかしい格好を取らせたりもした。怜は両手で尻を掴み、そして、暴力的に僕の内臓を犯したのだ。
目を閉じ感情のまま体をくねらせると、僕の高度は更に上がった。両足が中に浮くようなむず痒い感じ、空間が歪み、周囲の重力が螺旋のように曲げられる。
僕は自分を苛める硬直した怜を体内に受け入れ、体全体を使ってそれを許した。
痛みは苦痛ではなかった、その痛みが激しさが増す程、自分の体で怜に悦びを与えている自分を確認して、ある種の柔らかい満足感が膨らんでいくのが分かった。
同時にその苦痛は、紛れもなく怜と僕を他人でなくする、秘められた儀式だったのだ。 正直に言おう、僕は『感じて』いたのだ。
僕は首を激しく振り、怜の体にしがみつき、猛烈に悶えていた。
それは苦痛と呼ぶにはあまりに甘美な体験だった。
「体が裂けそうだよ…、怜、助けてくれ…」
甘く切ない、堕落の喜びに溢れた苦しみの叫びが無意識に口を突く。「登りつめる。登りつめるよ…。怜。モウ、ダメダァ…。アアアアァ…」
その瞬間、僕の中で輝くような光が弾けた。
*
行為を終えた後、怜はベッドに腰掛けて煙草を吸っていた。
「なあ、明日から俺と一緒にいろよ。何も心配はいらない」
「…………」
口からはまだ荒い息が漏れていた。僕の頭は文字通り真っ白で、怜の声は優しく鼓膜を撫でた。
「ところで、相談なんだけど、少しだけ金を用立ててくれないか」
僕は何も考えずに頷いた。
3
〈テンダー・イズ・ア・ナイト〉
怜の病気について知ったのは、出会って三日目の事だった。
『ル・ヴァルテ』でしこたま飲んだ後、怜は通りに止めた白い車に滑り込んだ。
「酔っぱらってるよ、大丈夫かい」
「ああ、丁度いいくらいだ。乗れよ。海を見せてやるよ…」
真夜中の車も疎らな車道を駆け抜け、運河に架かる橋を越え、車は港の岸壁らしき場所に止まった。
「わあ、綺麗だ」
満天の星空のように、背後の街で瞬く光は、地上のみならず天高くにも漏れて、本物の星空を乱暴に塗り込めてしまっていた。
その代わり、地上の挑戦をもろともしない白い月が、空の低い角度にあって、黒い軟体生物ような暗黒の海に、白熱灯のような一筋の光を曳いていた。
僕は窓を開け、血を連想させるような海の微かに錆びた匂いを肺に含む。
「フウッ。フウッ」
運転席で体を捩る怜の姿。僕はそれに気付くのが、少し遅れたのかも知れない。
「フウッー、ハッ…」
怜はハンドルにしがみつくようにして、苦痛に顔を歪めていた。
「どうしたんだ。だうしたんだよ…」
「クッ…」
怜は懸命に口を開いて何か言おうとしたが、それが言葉になる前に、断続的な呼吸に飲み込まれていった。
「何、何だって?」
僕は怜の口元に耳を近付ける。
「ク、ス、リ…」
「薬、薬って何の薬だよ!」
突然迫った死の恐怖に、僕はあわておののいた。怜は懸命に口を開き、乱れた呼吸のままダッシュボードを指差した。
「ク、ス、リ…」
僕はダッシュボードを開く、そこには何も書かれていない白い紙袋が無造作に突っ込まれていた。
「これかい?」
怜は三本の指を示して頷いた。袋の中には薬の粉を詰めたカプセルが、三列に並んだ状態で入っていた。
僕の手は小刻みに震えていて、それをうまく取り出せない。僕の目からは熱い涙が零れる。
「ウウウウッ」
「大丈夫かい、死んじゃ駄目だよ…」
僕はカプセルを口移しに怜に飲ませた。
怜は、大丈夫だ…、と懸命に呟いて、シートに凭れた。
*
「僕は怜が死ぬのかと思ったよ…」
暫くすると、怜の呼吸も元に回復し始めた。僕の目からは溢れる涙がとまらなかった。
「心臓が悪くてね…。たいした事はないさ」
「でも…、だって」
「おまえが、泣く事はないだろ」
怜は首を傾け笑みを漏らした。
「僕は死なないさ、安心しろよ、僕は死なない」
怜の細い指が僕の髪に絡み、そして、そのまま煙草の箱に伸びた。
「やめろよ。煙草なんか、心臓が悪んだろ」
怜は煙草に火を付けるが、軽く煙を吸っただけで激しく咳き込んだ。
「ほら、言ったじゃないか…」
怜は忌ま忌まし気に煙草を投げ捨てると、無言のまま車のエンジンを掛ける。
「どうしたんだ」
「いいものを、見せてやるよ。この先に防波堤があってね。車のまま、海の真ん中まで行ける…」
車は発進する。やがて進路の先に一直線に海に突き出した突堤が現れた。強固なコンクリートの壁の脇に、車二台が何とか擦れ違うのがやっとな位のアスファルト道路が張り付いている。
「ここだよ」
怜は突堤の方向に車を向け、ヘッドライトの光線を消した。突堤には街灯が幾つか並び、先端に立つ小さな灯台が、赤い光を発して点滅している。その先に広がる広大な暗黒は、その先に広がる広大な海を示していた。
「綺麗だね。まるで滑走路みたいだ」
「星の世界への滑走路だ。よし先まで行ってみよう」
キーッ。 突然タイヤが軋みを上げた。
「何をするんだ!」
「ハハハハ」
怜は微かに笑いながら、更にアクセルを激しく踏み込んだ。
「アアアアーッ、ヤメロ。止めろよ!」
周囲の景色が高速で流れる。並ぶ街灯の列が加速しながら迫り、やがて、灯台の明りが命の限界点を示す点滅のようにどんどん大きくなって近付いて来る。
「レイ、レイーッ!」
地球を覆う圧倒的な質量を示す、暗黒の海が眼前に広がる。まるで僕たちを飲み込もうと待ち構えるように…。
キキキキーツ。
激しいブレーキ音と共に車は軽く左右に振られた。僕が恐る恐る目を開くと、車は海の手前で停止していた。
「なあ、死なないだろ、僕は死なない…」
怜は咳き込みながら笑い続ける。
*
その後、怜はいつものように僕を荒々しくは扱わず、とても丁寧に体の敏感な部分をくすぐった。
僕はその心地の良さに、柔らかく包まれ、そのまま眠り込んでしまいそうなほどだった。
「僕はずっと昔から君の事を知っていたよ」
怜は僕の隣に横たわり、ホテルの部屋の白い天井を眺めていた。
怜は僕の髪を指で弄びながら、歌うように呟く。
「知っていた?」
怜は頷く。
「夢で見たんだ。どこか遠くの、多分ロシアかどこかの雪原だよ。戦いに敗れた敗残兵の列が、追っ手に怯えながら、遥か離れた母国を目指して歩いている」
「…………」
「彼等のコートはすり切れ、軍靴には泥を含んだ氷水が染み込んでいる。銃なんてとうに捨てられている。みんな何日も眠っていないし、まともなものなど口にしていない。それでも、遥か故郷を目指し、懸命に歩みを進める…」
怜はそこで言葉を切った、怜が沈黙する間、僕はその絶望的光景を思い浮かべてみた。
「何日目だろうか、とうとう僕は歩けなくなるんだ。僕は病気をしていてね、他の者より体力が消耗していたんだ。泥水に這いつくばる僕の脇を誰もが気付かぬ素振りで過ぎて行く。僕も含めて、みんなそんな死には慣れてしまっているんだ。僕だって凍ったまま放置された兵隊の死体を幾つも見て来た。僕は恐怖にかられ、懸命に過ぎようとする一つの足にすがりつく、僕がすがりついた足が…」
「僕なの?」
言うと、怜はゆっくりと頷く。
「君は僕の肩を抱えようとしたが、もはや、僕は自力で立つ事すらも叶わない。地面に崩れた僕を見下ろし、君はとても困ったような顔をしていたよ。その時、僕の目に、君が肩に担いでいる銃が映ったんだ。僕は頼んだよ。『撃ち殺してくれ。お願いだ。僕を撃ち殺してくれって』ね」
「…………」
「君は無表情に頷くと、背中の銃を下ろし、僕の心臓に長い銃身を向けて…」
「止めろよ」
僕は怜の話を遮った。「止めろよ、そんな話。僕が怜を殺すわけないじゃないか!」
「人生なんて絶望的な戦場だ。死と戦って生残った人間は一人もいない。人間なんて全て母国の国境線を越える事の出来ない哀れな敗残兵だよ。夢の中の君は、なんと言うか、天使に見えたよ…」
そう言って、怜は軽く咳をする。
「天使は、怜を打ち殺したりしないよ。そんなのただの夢だよ」
怜は僕に口付けをして、微笑んだ。
「僕は、手術をしなくてはいけない。手術には金がいるんだ。大した額でもないんだけど、その日暮らしの僕には、それでも大きな負担でね。あの街に暮らすようになってから、家族を頼る事も出来なくなった…」
「今、僕の持っているお金で足りるなら、使っていいよ。早く体を治せよ」
「心臓さえ治れば、仕事を見付けるよ。すぐに返せるよ。少しだけの間だ…」
4
〈ロマンティック・エゴイスト〉
僕はその時銀行に持っていた金の全てを、怜に委ねた。
例えば何年もまともな企業で休みもそこそこに働き続けた人に比べれば、貯金としては大きな金額ではないかもしれないが、僕にとっての残された財産の全て、もっと言うならば、この街で新たな未来に向けて旅立つための希望の拠り所でもあった。
数日後、この『ル・ヴァルテ』を訪れた僕に、店のオーナーは表情を変えずに告げた。
「怜ならしばらくは帰らないよ」
「どうして、何が…、怜はどこに?」
「さあね、いつもの事だよ…。それより、彼はうちの店にかなりのツケがあってね。君にツケておくようにと頼まれたんだけど…」
「僕は、そんな、お金も、全部…」
彼は髭の乗った唇を歪め、卑屈な笑みを見せた。
「騙されたんだよ。悪い事は言わない。ツケもいいから、あんたは田舎に帰りな。全部夢だったんだ。この街は、はかない陽炎のような場所なんだよ…」
*
カチッ。
最後の球がポケットに落ちた。彼は静かにキューを置いた。
「真琴。怜の居所を知りたいか?」
彼はカウンターに滑り込み、僕のタンブラーに砕いた氷を入れ、手早くロックを作った。「僕は、別に…」
店の紙マッチのケースの裏にペンで何かを書いて、僕の前に置く。
「言っとくが、金なら諦めなよ」
僕はためらう事なくそれを取り、開いて中を見た。
「ダンディ?」
マッチの裏には大まかな地図と、店の名前が書かれていた。
「まあ、行けば見付かるさ。俺たちの入るような店ではないけどね…」
*
『ダンディ』は通りを越えた街の向こう側にあった。僕たちにとってはその界隈は外国の様な場所だった。
女性を使った風俗店や怪しげなバーの呼び込みの男たちを擦り抜けながら、派手なネオンサインをともす『ダンディ』を見付けた。
「すみませんねえ。今日はご自宅までお送りできないで…」
「いいのよ。また今度デートして頂戴。ウフフフフ…」
店の前で佇んでいると、懐かしい神崎怜が現れた。怜には醜い笑顔を浮かべた中年の女がぶら下がるように腕を絡めている。
「あなたと会うのをみんないつも楽しみにしています。ぜひお店にも来て下さい。一同で精一杯のおもてなしをさせて頂きます」
「あら、こんな安物の時計なんかしてるの?誰が持たせたのかしら、あなたの様な素敵な人は、相応しい物を身に付けないと、今度、銀座で私が選んであげるわよ…」
「はははは、恐れ入ります…」
怜は醜く表情を歪めて会釈している。
「怜…」
僕は物陰から飛び出して、声を上げた。怜は眉をひそめる。
「あら、可愛い子。お知り合いなの?」
中年女が言う。
「さあ、誰だったか…」
怜は呆れたように首を振った。僕は立ち尽くし、やがて女を迎えに来たタクシーが僕と怜の間を裂いた。
「こっちに来いよ」
車が女を乗せて去った後、怜は僕の耳元で短く言った。怜は僕の肩に手を掛け、薄暗い路地裏へと誘った。「何しに来たんだ」
「何って…。マスターに教えられたんだ」
「そうだ。金は借りたままだったか?」
「お金の話じゃないんだ」
「それじゃ、何の用だ?」
「だって僕たちは昔…」
突然、拳が飛んで来た。その後、腹を蹴られ、僕は地面に倒れる。
倒れた僕の襟を、怜の拳が掴んだ。
怜は耳元で囁く。
「うだうだうるせえんだよ、てめえらは。よく聞けよ。一度しか言わねえぞ。俺はてめえの事なんか、何一つ覚えてねえんだ」
怜はそう言った後、立ち上がって僕の、腹を蹴り上げた。
「ウウッ…」
「ホラよ。カネなんだろう。どうせ、カネにたかりに来たんだろうが」
蹲る僕の目の前に、一万円札が何枚も降り注ぐのが映った。
「怜、僕は…」
怜は僕の呟きが聞こえない様子で、捲し立てる。
「これで足りるだろう。俺はあの頃の俺じゃねえんだ。いいかよ。二度とツラを晒すんじゃねえぞ、このカマ野郎」
僕は地面に頬を付けた。やがて、怜の足音が去って行く。
「ウウウッ…」
僕は唸りながら、光に溢れる路地の向こうの景色を見る。視線の先ではネコが散らばったゴミを漁っていた。
その脇で、僕は惨めにも地面を這いずり回り、散らばった一万円札を、懸命に、一枚も失わない様、拾い集めた…。




