10.レポート
『光が丘ズーワールドの現状についてのレポート(第七五週目)』
発信者 認識コード Z9001-C
対象 本動物園及び言語能力を有する非ヒト霊長類個体群
一、当該施設における飼育環境は概ね良好であり、給餌・衛生・生活空間いずれも水準を満たしている。
前園長から現園長への交代により大幅な改善が認められた。
また、動物福祉上の明白な逸脱も現時点で確認されておらず、言語能力を有する非ヒト霊長類個体群に対する職員の接触・対応にも過剰な干渉や不当な制約は認められない。
よって、現在本動物園の運営体制において、直ちに介入を要する危機は存在しないと判断する。
二、追記事項
ただし、以下に示す事象により、継続的な観察の必要性が高まっている。
1. オスのオランウータンにより「本当は人権を望んでいたが、多数決により却下された」という趣旨の発言が認められた。
また、多数決が行われたことそのもの、そこに至る過程は個体間で『秘密』とされており、詳細が開示されていない。
前述のオランウータンからは「その話はしてはいけない言われた」との言葉も認められ、強い内部的制約の存在が疑われる。
また、言語能力を有する個体群内では、発話可能な非ヒト霊長類を一つの群れと見做し、リーダーに該当する個体が存在することが発覚したが、前述のオランウータンを含む言語能力を有する非ヒト霊長類への制約は、そのリーダー個体によって課されたものであると確認できた。
2. リーダー個体に対してなんらかの団体、または人物による思想介入があった可能性がオランウータンの発言から疑われる。
その詳細は不明ではあるが、人権取得に関し、群れが不利益を被る意図的な扇動あるいは誘導に該当する行為があった可能性が完全に否定できなかった。
またオランウータンからは
「リーダーはよい人間の団体と接触していたらしい」
「団体が多数決が民意を測るのにはオススメだと言われたらしい」
との発言もあり、その団体及び人物の言動についても詳細な調査が求められる。
三、提言
以上を踏まえ、本動物園における言語能力を有する非ヒト霊長類の「自発的意志決定の正当性」について疑義が生じている。
本動物園に関して現状の飼育・管理体制に即時的問題はなく、強固な監視の必要性はないと思われるものの、個体の「表明された意志」と「真の意志」の乖離が進行している場合、人道的・倫理的観点から重大な問題を引き起こす可能性が否定できない。
よって、個体に対して更なる観察が要されるだろうと判断した。
ついては、観察期間の延長と、可能であれば心理学的ヒアリングに長けた専門員の追加派遣を要請したい。
以上




