恋のライバル現る!? 最強の束縛系ルームメイト!
「ちょっと顔貸して」
「お、おう?」
放課後、私はクラスメートにして幼馴染のソウを伴い、人のいない視聴覚室に入った。
彼にどうしても確認したいことがあった。
あれは今朝のこと――
†
「いやー、今朝もベッドから出るのが大変だったぜ」
「なんで?」
教室で聴こえてきたのは、ソウと別の男子の話し声だ。
実は、私はかなり耳がいい。ソウ達は、話が聴かれているとは思っていないだろう。
「俺は学校に行かなきゃいけないのによう、ルームメイトのコレが離してくれないのよ」
「え。ルームメイトなんているの、お前?」
小指を立てて自慢気に語るソウに、驚く男子。彼の反応は、私の内心と一致していた。
ソウとは長年の付き合いだが、私も聞いたことないぞ、そんな話。しかも、コレって何!? まさか、カノジョ!?
「――ユカちゃん、どうしたの? 顔が怖いよ」
前の席の女子――マイが、私を見て怪訝そうに訊ねてきた。
ソウ達の会話は続く。
「……まあな。つい先週うちに来たんだけどな。もう、毎晩すごいぞ」
「マジかー。先越されちゃったかー」
愕然とした。
私はそんなポッと出の女に、ソウを寝取られてしまったのか!
「ユ、ユカちゃん!? 大丈夫? しっかりして!」
マイが私の肩を掴んで揺さぶってきたが、それどころではなかった。
「――今朝も組んずほぐれつ俺を引き止めて来てなあ。ああ、早く帰りてえ」
「羨まけしからん。爆発してしまえ」
ギリッ、と私は奥歯を強く噛み締めた。
……問い詰めなければならない。いざとなれば、ソウの家に踏み込んでやる。
「ひっ」
……おっと、マイを怖がらせてしまったようだ。
†
「――本当なの、あの話?」
「え? ど、どの話?」
「とぼけないで」
時は戻り、放課後の視聴覚室にて。
私の問いに対し、ソウは目を白黒させた。
「教室で話してたでしょう? あなたのルームメイトの話よ」
「あ! あー、あれね!」
ソウは手を打ち鳴らした。
どんな言い訳をするのかと思ったら、ソウは急にいい笑顔になった。
「ユカ。勘違いだよ」
「は?」
肩に手を置かれ、私はイラッとした。
「ルームメイトっていうのは冗談。あれは先週、家に届いた羽毛布団の話をしてたんだ」
「ふ、布団……?」
――季節は冬。
そろそろ朝起きるのがつらい時期だった。
(ルームメイトじゃなくて、ただの布団の話だった……?)
「本当にすごいんだよ、あの布団! ユカも体験してみろよ。良かったら俺と一緒に――」
次の瞬間、私はソウに右ストレートをぶち込んでいた。